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乙霧村の七人

著者:伊岡瞬



22年前、戸川稔という男によって一家五人が惨殺される、という事件が起きた乙霧村。この事件を題材にした『乙霧村の惨劇』というノンフィクションを書いた大学教授・泉蓮。彼が顧問を務める文学サークルの6人がこの村を訪れる。事件当時と同じく、雨が降りしきる中、6人は斧を持った大男に襲われて……
著者は、こんな作品も書くのか、というのがまず第一かな。
物語の導入は冒頭に書いた通り。
主人公の友里は、泉のノンフィクションに感銘を受け、それに学びたいとそのサークルに入った女性。しかし、サークルの面々は、ただ、泉のネームヴァリューを狙っただけのチャラい面々もおり、しかも、メンバーの一人・純を巡ってのドロドロの関係もある。そもそもが、3年生主体のサークルで、4年生の友里というのも浮いた存在。そんなギクシャクした中で訪れた乙霧村で……
惨劇の舞台となった屋敷で出会った大男。最初は、ただ、不法侵入をとがめられるだけかと思ったが、サークルメンバーの悪戯が原因で、その男に追い回されることに。男に発見されれば……という恐怖の中で、明かりをつけることもできない。土地勘も無ければ、アクシデントなどもありサークルの面々はバラバラになっていく。何とか、村の外へ、と脱出を目指すが、その場所には男が連れていた大型犬が……。そんな村の中を逃げ回ることになって……
そんな第1部。そして、その後に、その事件の真相へ……という第2部で謎解きが行われるのだけど……
第1部で綴られていたサークル内の人間関係のゴタゴタの原因。事件の黒幕ともいえる存在。さらに、その動機。そういったものは、一応、ここで解明される。されるのだけど、何かそう上手くいくのだろうか? という気がしないでもない。そもそもが、このシチュエーションであれば、事件の結末としてもっと凄惨なことになっていそうだけど、終わってみるとそこまででもないし、動機とかもちょっと無理やりな気が……。そして、何よりも最後に明かされる物語の仕掛け……って、これ、何か意味あった?
リーダビリティは高いので、B級ホラー、B級サスペンス作品として楽しむことはできたけれども。読み終わってみると、色々とツッコミどころを感じてしまう、という印象。

No.6631

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Tag:小説感想伊岡瞬

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