著者:奥田英朗
「家」を舞台とした作品6編を収録した短編集。
「前向きになれる」 こんなフレーズを私は良く使う。そして、本作の作品はそれぞれ、登場人物が物凄く前向き。読んでいて、まず、それを感じる。
勤めていた会社が倒産した裕輔。妻は働きに出て、自分に対しては様々な慰めの、励ましの言葉を受ける。けれども、妻も本人も、その新しい生活が楽しい。目下の目標は、息子が全部食べてくれる弁当を作ること…と言う『ここが青山』。
妻が家を出てしまい、家具も持っていってしまった。それを機に、自分好みの家具を集め、自分にとって居心地の良い空間を作る正春。同僚にも羨ましがられ、たまり場になっていく『家においでよ』も、状況を全く悲観していない、実にポジティヴな物語。
また、思いつきで職を転々とする夫に苦労しながら、何故か、その転機になると自らも成長できているイラストレーター春代を描いた『夫とカーテン』。
それぞれ、一般的な、日本的な価値観から考えれば「どうしようもない」と言う状況なのに、それぞれ実に前向き。ネットオークションに嵌っていく主婦・紀子を描いた『サニーディ』の気持ちの良い終わり方から始まって、実に温かい気分になる作品になる。
こういう風になると、「ちょっと毒のある作品もほしいな」などと思えてくる。そうすると、最後の1編『妻と玄米御飯』が活きる。文学賞を受賞したことで売れっ子になった作家・大塚の妻が嵌ったのはロハス、オーガニックの活動。大塚自身はそれに懐疑的であるし、不満もある。けれども、それがいえない。「ロハス」「オーガニック」などに対する皮肉と共に、それが言い出せない大塚に対する皮肉という二重の毒が効いている。けれども、そんな状況でもラストシーンは、何か「ほっ」とする。
前向きになれる、というか、ほっとできる。そんな作品のように思う。
通算1306冊目

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テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学
>それぞれ、一般的な、日本的な価値観から考えれば「どうしようもない」と言う状況なのに、それぞれ実に前向き。
そうそう,そこが一番いいところ!ですよね〜。
読んでいて,何やら分からんけど元気になった作品でしたo(^▽^)o
きりりさんへ
でも、そんな中でも良くある状況だとかが上手く描写されていて、さすがだな、という風に思いました。
そらさんへ
弁当作りにハマって、息子に全部食べさせるのを目標、とかって、凄くやりがいがありそうだな、と想いました。
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