著者:立川浦々


中田忍の意思を曲げ、晴れて同居生活継続を勝ち取ったアリエル。自動車免許の取得、アルバイト開始……と現代社会への融和を進めていくが、そんな彼女を忍を複雑な心境で見守っていた。そんな矢先、新たな耳神様伝説の残滓を知り……
大分、佳境に入ってきたな、というのがまず思うところかな。
物語冒頭は、住民票などを取り、現代社会へと入ろうとするアリエルの姿。自動車免許を取り、初めての運転。犠牲者は一人で良いとばかりに中田一人が同行。その一方で、いつものスーパーで環と共に始めるアルバイト。忍に仕込まれていたこともあり、魚をさばく作業に関しては、オヤカタが驚くほどの腕前。予想以上に社会へと上手く適合している、という様子が描かれる。そして、そんな中、環が「耳神様」の痕跡を探す中で姿を見せていた老人から思わぬ情報が……
その中に、忍の職場での出来事とかを挟みつ、その情報を元にして瀬戸内海の、かつて毒ガス工場があった島へ……
「ここは、天国ではーーありませんでした」
というアリエルの言葉が印象的。
瀬戸内へと向かう中で訪れることとなる広島の原爆資料館。そこに記されていた、人間の愚かな行為の情報。そして、目的地の島で待っているであろうこと。それは、食事などに困ることはなく、現代社会が天国のように感じていたアリエルに冷や水をかけるような現実。
さらに、耳神様に関する情報を求める旅の中で見え隠れしてくる協力者たちの中の心境の変化。どちらかと言えば、自分の仕事を淡々をこなすタイプである由奈が見せた思わぬ行動。表に出さないようにしているが、しかし、傍から見ていても(忍以外には)バレバレの環の忍への想い。忍の、アリエルに対する思い。そういうものがだんだんと露になっていく。そして、アリエルによって発見された無人島の探索を経て……
ある意味では、アリエルの成長とも受け取ることができる、彼女が最後に見せた「秘密」。そして、その端緒を知り、自分の想いを叶えるために環が見せた仕草……
この巻のエピソードにおいて「ここは天国ではない」というメッセージが強く強調されたわけだけど、協力者たちの中に現れてきた思惑のすれ違い、というのが、そのテーマと繋がっていくのではないか? という予感がしてならなかった。
No.6634

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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中田忍の意思を曲げ、晴れて同居生活継続を勝ち取ったアリエル。自動車免許の取得、アルバイト開始……と現代社会への融和を進めていくが、そんな彼女を忍を複雑な心境で見守っていた。そんな矢先、新たな耳神様伝説の残滓を知り……
大分、佳境に入ってきたな、というのがまず思うところかな。
物語冒頭は、住民票などを取り、現代社会へと入ろうとするアリエルの姿。自動車免許を取り、初めての運転。犠牲者は一人で良いとばかりに中田一人が同行。その一方で、いつものスーパーで環と共に始めるアルバイト。忍に仕込まれていたこともあり、魚をさばく作業に関しては、オヤカタが驚くほどの腕前。予想以上に社会へと上手く適合している、という様子が描かれる。そして、そんな中、環が「耳神様」の痕跡を探す中で姿を見せていた老人から思わぬ情報が……
その中に、忍の職場での出来事とかを挟みつ、その情報を元にして瀬戸内海の、かつて毒ガス工場があった島へ……
「ここは、天国ではーーありませんでした」
というアリエルの言葉が印象的。
瀬戸内へと向かう中で訪れることとなる広島の原爆資料館。そこに記されていた、人間の愚かな行為の情報。そして、目的地の島で待っているであろうこと。それは、食事などに困ることはなく、現代社会が天国のように感じていたアリエルに冷や水をかけるような現実。
さらに、耳神様に関する情報を求める旅の中で見え隠れしてくる協力者たちの中の心境の変化。どちらかと言えば、自分の仕事を淡々をこなすタイプである由奈が見せた思わぬ行動。表に出さないようにしているが、しかし、傍から見ていても(忍以外には)バレバレの環の忍への想い。忍の、アリエルに対する思い。そういうものがだんだんと露になっていく。そして、アリエルによって発見された無人島の探索を経て……
ある意味では、アリエルの成長とも受け取ることができる、彼女が最後に見せた「秘密」。そして、その端緒を知り、自分の想いを叶えるために環が見せた仕草……
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