著者:秋竹サラダ


中間試験が終わった日の放課後、数学教師である坂口は、倉庫代わりに使われている旧校舎へ机の交換作業のために向かう。そして、そこで奇妙な「あれ」と出会う……(『床下に潜む』)
から始まる物語。
第25回日本ホラー小説大賞・大賞&読者賞受賞作。
一応、長編ということになるんだよな……。物語は、3つの短編と、それらをまとめる形の中編という構成で綴られる。
粗筋で書いた1編目は、机を交換するため、旧校舎へと向かった坂口が、そこで祭火という生徒に「あれ」という存在がいる、ということを知らされ、そこで奇妙な出来事に襲われる。だが、祭火の言葉からヒントを得て、その災難を辛くも逃れる、というもの。この話は、坂口が助かった、という結末はわかるものの、それが何だったのかわからないまま……。
そして2編目『にじり寄る』、3編目『しげとら』と、それぞれ別の主人公での物語に。そこでも、奇妙な出来事に悩む主人公が、祭火に救われる形に。1編目より、2編目。2編目より、3編目がより嫌な印象を与える物語に。
特に3編目『しげとら』は、ホラーとしての怖さを感じる。幼いある日、新しく買ってもらった外行きの服を破いてしまった葵。そこに現れた「しげとら」という男に10年後に返せ、という契約で同じ服をもらう。だが、その直後、しげとらが「返済」と称して人間を消してしまう姿を目の当たりにする。10年後、自分も消されてしまう? そんな恐怖におののきながら過ごす葵。周囲に警戒しながら過ごすが、「しげとら」は別人に成り代わったりして神出鬼没で、返済までの期間を示してくる。いよいよ、契約の10年後が迫る中……。神出鬼没のしげとらに追い詰められていく恐怖。その中で自衛のために武器などを用意する葵。だが、そこに現れた祭火は……。思わぬ形の決着は素直に上手かったし、その上で、1編目から3編目で、それぞれ怪異には法則性がある、ということが示される。
そして、4編目『祭の夜に』。主人公は再び坂口へと戻り、そんな坂口は、祭火から「7月21日の夜、兄が魔物に襲われるから助けてほしい」と頼まれる。坂口の他、2編目の主人公・浅井、そして3編目の主人公・葵も協力することになり……
これまで、どこからともなく表れて、ヒントを与えてきた祭火。そんな祭火への恩返しと張り切る面々だが、イマイチ、祭火の意図が分からない。しかも、坂口は祭火の兄が4年前に死亡していたことを知る。それなのに? 祭火の狙いは何なのか? そんな疑惑を覚えつつも、いざ、彼女の指示に従う中、魔物は実際に現れて……
怪異に法則性が存在していること。協力者が協力をする理由。その辺りに説得力を持たせるために前半があるのはわかったけど、その分、後半の話はちょっと駆け足になった感は否めないかな? ただ、祭火の抱えていたもの。兄がしようとしていたこと。そういうのがしっかりと回収されての後味は良かった。純粋に怖さ、という点では3編目が抜群だと思うのだけど、キャラクター性とか、そういうのを活かすために、この形が一番だったのだろう、という気がする。
No.6636

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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中間試験が終わった日の放課後、数学教師である坂口は、倉庫代わりに使われている旧校舎へ机の交換作業のために向かう。そして、そこで奇妙な「あれ」と出会う……(『床下に潜む』)
から始まる物語。
第25回日本ホラー小説大賞・大賞&読者賞受賞作。
一応、長編ということになるんだよな……。物語は、3つの短編と、それらをまとめる形の中編という構成で綴られる。
粗筋で書いた1編目は、机を交換するため、旧校舎へと向かった坂口が、そこで祭火という生徒に「あれ」という存在がいる、ということを知らされ、そこで奇妙な出来事に襲われる。だが、祭火の言葉からヒントを得て、その災難を辛くも逃れる、というもの。この話は、坂口が助かった、という結末はわかるものの、それが何だったのかわからないまま……。
そして2編目『にじり寄る』、3編目『しげとら』と、それぞれ別の主人公での物語に。そこでも、奇妙な出来事に悩む主人公が、祭火に救われる形に。1編目より、2編目。2編目より、3編目がより嫌な印象を与える物語に。
特に3編目『しげとら』は、ホラーとしての怖さを感じる。幼いある日、新しく買ってもらった外行きの服を破いてしまった葵。そこに現れた「しげとら」という男に10年後に返せ、という契約で同じ服をもらう。だが、その直後、しげとらが「返済」と称して人間を消してしまう姿を目の当たりにする。10年後、自分も消されてしまう? そんな恐怖におののきながら過ごす葵。周囲に警戒しながら過ごすが、「しげとら」は別人に成り代わったりして神出鬼没で、返済までの期間を示してくる。いよいよ、契約の10年後が迫る中……。神出鬼没のしげとらに追い詰められていく恐怖。その中で自衛のために武器などを用意する葵。だが、そこに現れた祭火は……。思わぬ形の決着は素直に上手かったし、その上で、1編目から3編目で、それぞれ怪異には法則性がある、ということが示される。
そして、4編目『祭の夜に』。主人公は再び坂口へと戻り、そんな坂口は、祭火から「7月21日の夜、兄が魔物に襲われるから助けてほしい」と頼まれる。坂口の他、2編目の主人公・浅井、そして3編目の主人公・葵も協力することになり……
これまで、どこからともなく表れて、ヒントを与えてきた祭火。そんな祭火への恩返しと張り切る面々だが、イマイチ、祭火の意図が分からない。しかも、坂口は祭火の兄が4年前に死亡していたことを知る。それなのに? 祭火の狙いは何なのか? そんな疑惑を覚えつつも、いざ、彼女の指示に従う中、魔物は実際に現れて……
怪異に法則性が存在していること。協力者が協力をする理由。その辺りに説得力を持たせるために前半があるのはわかったけど、その分、後半の話はちょっと駆け足になった感は否めないかな? ただ、祭火の抱えていたもの。兄がしようとしていたこと。そういうのがしっかりと回収されての後味は良かった。純粋に怖さ、という点では3編目が抜群だと思うのだけど、キャラクター性とか、そういうのを活かすために、この形が一番だったのだろう、という気がする。
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