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血の配達屋さん

著者:北見崇史



家族を置いて家出をした母。その結果、崩壊してしまった家族をどうにかするため、大学生の私は母が暮らしているという北海道の独鈷路戸へと向かった。だが、そこへ向かうバスは廃車かと見まがうようなオンボロバス。乗り込む人間は、猫(?)が入ったズタ袋を抱えた老人たち。そして、奇妙な出来事が……。そんな移動を超えて辿り着いたそこは、腐臭が漂う寒村。そして、そこには動物の死骸が動き回っていて……
第39回横溝正史ミステリ&ホラー大賞・優秀賞受賞作。単行本『出航』の改題作。……ただし、賞への応募時は、本作のタイトルだったらしい。
……なんだ、コレは? それが何よりも最初に出てきた感想だったりする。
とにかく、物語はその冒頭から、生臭い匂いが漂ってくるような描写が続く。母が住む村へと向かうバスの中、そして、辿り着いた村で出会う奇妙な生き物(?)たち。村の中には、動物の遺体などが普通に放置されており、そこではなぜか動物の内臓が生きているかのように闊歩している。腸がまるでヘビのようにウネウネと這っていたり……と。漁港とかに行くと、何か魚の腐った……というか、干からびた、というか、そんな匂いがしたりすることはあるのだけど、頭の中でその匂いが何倍、何十倍にも強烈になっている状況が浮かんでいた。
そして、そんな村に暮らす人々。出会う人々は老人ばかりで、しかも、主人公に対して厳しい口調で「歩き回るな」「出ていけ」というような言葉をかけてくる。再開した母も、そんな奇妙な生物には触れず、仕事に行くから家にいろ、というばかり。そんな言いつけを破り、村を歩く主人公だが、そこで奇妙な儀式をしている母たちを目撃して……
なぜ、そんな奇妙な生物(?)が蠢いているのか? 母が参加している儀式は何なのか? そして、母の仕事である「配達」とは? そんな謎が浮かび上がってくる。
……のだけど、なんか主人公がどうにも好きになれない。まぁ、キツい言葉を発する村人に反発を覚えるのはわかるけど、それでも母親の言いつけとかも完全に無視するし、村人を基本的に馬鹿にするし。さらに、主人公の家族や恋人に関しても……。いきなり恋人が村へとやってきたり、唐突に父親や妹が村に現れたりと、なんかいきなり感のある展開があり、「なんで?」と思われる部分がしばしばある。それでも、村が隠している秘密とか、そういうものは面白く読めたのだけど。
解説などによれば、本作のモチーフとしてクトゥルフ神話などがあるらしいのだが、自分が全く詳しくないため、そこがわからなかったのは、自分の責任なんだろうな。ただ、それを差し引いても、「なんだコレ?」という思いが強いかな、と。

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Tag:小説感想角川ホラー文庫北見崇史

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