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相続人

著者:保科昌彦



東京学院大学のアメフト部員・佐々木が不可解な事故死を遂げた。佐々木は、わずか数時間前まで試合に出場し、活躍をしていた矢先。普段から、慎重な運転をしていた彼がなぜ、そのような事故を? 疑念が渦巻く中、OBでスポーツ紙記者の牧野は、同業他社の記者を名乗る美女・北川が佐々木と一緒にいたことを思い出す。だが、その会社に北川という女性記者はいないという。不可解な状況に混乱する中、さらに同じアメフト部員たちが不可解な死を遂げていって……
第10回日本ホラー小説大賞・長編賞受賞作。
ジャンルとしては「ホラー小説」に入るのだけど、怪奇現象をなどを前提にしつつ、ミステリ的な展開で手堅くまとめてきた作品という印象。
冒頭に書いたように、物語は東学大のアメフト部員・佐々木が奇妙な事故死を遂げた、というところから始まる。死の直前、佐々木は正体不明の美女と一緒におり、その女が関わっているのではないか、という疑念が……。そして、次々とアメフト部員たちが死んでいく。なぜ、部員たちは死なねばならないのか? 取材を続ける中、牧野は29年前に、アメフト部の部員たちがある事故を起こしていた、ということを突き止める。
牧野は、目の前でアメフト部員たちが死んでいく、という状況しか見えていないのだけど、読者は、そのOBたちが何かを起こし、その報いとして今の事態が起きていることを理解している。そのことを隠そうとするが、しかし、子供の死、という状況の中で一枚岩とは言えず……。だんだんと見えてくる女の正体。だが、それは現実ではありえないようなこと。上司らには理解されず、しかし、29年前の事故で死んだ女の怨念だ、という確信をもってそのOBたちにも当たっていくのだが……
そもそも、女は、なぜ、自分を殺した本人ではなく、その子供を狙っているのか? なぜ、このタイミングなのか? そして、なぜその女は牧野の前に現れるのか? そんな謎が浮かび上がってきて……
過去の事件の中心人物の、極悪非道な行動とか、女と奇妙な事件を巡っての対立が生まれたりとか、常に飽きない工夫は素直に上手い。その辺りでどんどん読み進めることができた。ただ、その真相は……結構、そのまんま、なんだよな。しかも、牧野の前に女が現れる理由に関しては、終盤に後付け的に「実はこうでした」というのが判明するため、ちょっと弱い印象がある。
物語の進め方とか、そういうのが上手いので引き込まれたのだけど、まとめ方はちょっと納得いかない部分も残った。

No.6641

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Tag:小説感想角川ホラー文庫保科昌彦

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