著者:久坂部羊


カエサル・パレスクリニック。大阪、りんくう地域に佇むこのクリニックは、外科医・才所が開発した癌を可視化する「CCC法」を用いた治療で、各国の富裕層を受け入れていた。そんなある日、久々に訪れた顧問・福地が急死する。顧問の死をきっかけにしたかのように、クリニックには逆風が吹き始めて……
読み終わってみると、著者の作品だな……という印象。悪い意味で。
本作のテーマは医療ツーリズム、自由診療といったものだろうか。
冒頭に書いたように、物語の舞台となるカエサル・パレスクリニックは、才所、趙、有本、小坂田という4人の優秀な意思を中心にした治療体制を敷くクリニック。CCC法というのは、独自の方法論で、自由診療として提供されている。そのため、治療費は、数千万円以上になるが、海外の富裕層を集め、実績を残しつつある状態、というのがまず前提。
だが、そんなところで起きた顧問の死。さらに、この病院に対し、批判的な記事がメディアを騒がせ始める。その記事を書いたジャーナリスト・矢倉は、クリニックが自由診療で暴利をむさぼり、しかも、庶民との医療格差が生じていることを批判する。一方で、顧問の死についても、遺族が怪しみ始めて……
金があろうとなかろうと、医療に格差はない方が良い。ある意味では理想論。けれども、機材やら何やらには金がかかる。国民皆保険ですべてが賄えるようになる、とする場合、そういった先進医療は高額になってしまうため、保険制度そのものに負担を強いることになる。また、医療機関と言えども、「商売」という部分もある。それを否定して良いのか? 父を癌で亡くし、その時の出来事から故に患者の希望に沿うような治療を、と考える才所。しかし、それは矢倉の記事によって悪意に晒されていく。
個人的に、自由診療って、あまり良い印象はないのだけど(根拠のないインチキ医療とかが蔓延っているイメージがあるので)、金を持っている人がそれを選択する自由はあってよいと思う。リスクを承知の上で自ら人体実験の被験者になりたいのなら、それで良いとも思っている。100%、善意の治療を、とは言えないが、それでも、実績を重ねている才所が、インチキで法外な報酬を得ている詐欺師のごとく報じられていく様、というのは流石に気の毒だ、という風に感じられた。
と、中盤までは素直に面白かった。が、終盤は著者の悪い面であるグダグダ展開になってしまった印象。
隠していることがある、というのは確かだけど、そこまで一緒にいた医師たちが突如……というのはあまりに唐突。さらに、主人公である才所の、物語を綴るうえでの前提と読者が認識していた部分が実は……というのは、物語としてダメじゃない? という感じ。これが、叙述トリックとかならともかく、そうではないだけに……
医療ツーリズム、自由診療というテーマは面白いけど、物語としては……。ある意味では、いつも通りの感想になった気がする。
No.6642

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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カエサル・パレスクリニック。大阪、りんくう地域に佇むこのクリニックは、外科医・才所が開発した癌を可視化する「CCC法」を用いた治療で、各国の富裕層を受け入れていた。そんなある日、久々に訪れた顧問・福地が急死する。顧問の死をきっかけにしたかのように、クリニックには逆風が吹き始めて……
読み終わってみると、著者の作品だな……という印象。悪い意味で。
本作のテーマは医療ツーリズム、自由診療といったものだろうか。
冒頭に書いたように、物語の舞台となるカエサル・パレスクリニックは、才所、趙、有本、小坂田という4人の優秀な意思を中心にした治療体制を敷くクリニック。CCC法というのは、独自の方法論で、自由診療として提供されている。そのため、治療費は、数千万円以上になるが、海外の富裕層を集め、実績を残しつつある状態、というのがまず前提。
だが、そんなところで起きた顧問の死。さらに、この病院に対し、批判的な記事がメディアを騒がせ始める。その記事を書いたジャーナリスト・矢倉は、クリニックが自由診療で暴利をむさぼり、しかも、庶民との医療格差が生じていることを批判する。一方で、顧問の死についても、遺族が怪しみ始めて……
金があろうとなかろうと、医療に格差はない方が良い。ある意味では理想論。けれども、機材やら何やらには金がかかる。国民皆保険ですべてが賄えるようになる、とする場合、そういった先進医療は高額になってしまうため、保険制度そのものに負担を強いることになる。また、医療機関と言えども、「商売」という部分もある。それを否定して良いのか? 父を癌で亡くし、その時の出来事から故に患者の希望に沿うような治療を、と考える才所。しかし、それは矢倉の記事によって悪意に晒されていく。
個人的に、自由診療って、あまり良い印象はないのだけど(根拠のないインチキ医療とかが蔓延っているイメージがあるので)、金を持っている人がそれを選択する自由はあってよいと思う。リスクを承知の上で自ら人体実験の被験者になりたいのなら、それで良いとも思っている。100%、善意の治療を、とは言えないが、それでも、実績を重ねている才所が、インチキで法外な報酬を得ている詐欺師のごとく報じられていく様、というのは流石に気の毒だ、という風に感じられた。
と、中盤までは素直に面白かった。が、終盤は著者の悪い面であるグダグダ展開になってしまった印象。
隠していることがある、というのは確かだけど、そこまで一緒にいた医師たちが突如……というのはあまりに唐突。さらに、主人公である才所の、物語を綴るうえでの前提と読者が認識していた部分が実は……というのは、物語としてダメじゃない? という感じ。これが、叙述トリックとかならともかく、そうではないだけに……
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