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ちいさな君と、こえを遠くに2

著者:ツカサ



声優になるためのレッスンを始めて2か月。南エレナの新作オーディションに合格したソラたちは、夏休みを利用し、収録のために東京へと向かう。それぞれの思いを胸にしながらも収録、さらに東京観光など、合宿のような日々は過ぎるのだが……
前巻は、バンドのボーカルではあったが、その声を声変わりによって失ってしまった奏太が、声優になりたいというソラたちをレッスンするという話。今回は、その成果もあり、オーディションに合格をした後、ということで、その辺りの描写はなく、エレナの家に寝泊まりしての収録などの諸々。
先に書いたレッスン部分がほぼなかったことで、かなりラブコメ色が強くなった印象。収録に対しては非常に真摯な面々。しかし、遊びに行ったり何なり、というところでは、年相応。しかも、それぞれが、それぞれに奏太に対する想いというのを抱いている。そんな中で、イベントで発表するスポット映像用の収録をすることになる。そして、奏太もまた、そこにアカペラで参加することになって……
ここからが、一気に、「仕事」とは? という側面を強くするシーンと言える。
決して悪い演技ではない。しかし、エレナは満足することなく、収録時間は過ぎてしまう。スタジオを使用する時間も、編集などをする時間も限られた中でのそれは、不完全燃焼と言わざるを得ないもの。発表においても、概ね公表ではあるが、しかし……
プロとしての意識を持っているからこそ、自分の演技などに納得することができない。中途半端な演技だ、というのはソラ自身が誰よりも強く感じている。そして、同じことは奏太もまた……。かつての声を失った奏太がもがく中で、自分の新たな道を探ろうとする中で突き当たる壁。先に書いたように、一般的な評価でいえば、十分だけど……という部分があるからこそ、この意識の高さ、というのが光るんだろうな。そして、そんな悔しい思いをしたからこそ、本当に収録の場において二人は……という流れに説得力を持たせることに成功している、とも感じた。
エレナ自身は、自主製作という形をとっているものの、世間に認められ、スポンサーなどがついたことにより、「自分ですべて」という体制はこれが最後。そうなると、ソラたちを自由に出すことはできない。だからこそ、ソラたちは、本職になることを目指して……。これはこれで、しっかりとまとまった話になっていると思うけど、一応、まだ続編は執筆中とのこと。この一つの経験が、奏太、ソラたちの新たなステップに向けてどう糧になっていくのか、というところを期待したいところ。

No.6643

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Tag:小説感想講談社ラノベ文庫ツカサ

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