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不審者

著者:伊岡瞬



夫と息子、義母……と暮らす里佳子。義母の言動にイラっとすることはあるものの、平穏な日々。しかし、ある日、夫の秀嗣が一人の男を招く。その男、優平は義母の離婚により離れ離れとなった秀嗣の兄だという。しかし、義母は、「息子じゃない」と否定。職業すら不明な優平に不信感を抱く里佳子だったが、優平は家に居候するようになって……
THE・イヤミスという感じの話だな、という印象。
ちょっと我が強い義母との関係に悩みはないではないが、しかし、概ね平穏な日々を送る里佳子。子供時代のこともあり、堅実なことをモットーにする里佳子と、非常にのんきでおっとりとした夫。育ち盛りの息子という家庭にやってきた闖入者の優平。職業すら不明で、クラウドファンディングの会社をやっている、なんていうのも胡散臭いことこの上ない。優平に対して不信感を隠せない里佳子だったが、夫は兄のことを信頼しきり、息子も優平を好きになっていく。だからこそ、気持ちが悪い。
物語が里佳子視点で綴られる、ということもあるのだけど、本当に優平が胡散臭い。義母が亡くなればその遺産は自分たちのもの。そんな思いもあるが、優平が現れたことで、その様相は様変わり。勿論、これは民法で定められたことだけど、何かを画策している様子の見える優平となれば、まず疑わしいのはそのこと。さらに、クラウドファンディングなんていうのは、自分たちの資産まで狙っているのでは? そんな疑念が次々と。そんな中で、家庭内では奇妙な出来事が……
いよいよ優平がその本性を出したのか! そう思うところなのだけど、そんな事件の中で、夫や義母、さらには里佳子自身が隠していた過去なども含めて色々と明らかになっていく。その中でも相変わらず、疑念の大本命は優平ではあるのだけど、しかし、誰がその黒幕であってもおかしくなくなっていって……
この真相は……どうなのだろう?
ひっくり返しという意味での驚きは勿論ある。そして、だんだんと優平だけではなく、周囲の面々についても胡散臭さが漂ってきて、という部分の中に伏線と言えるものもあったのは確か。ただ、それでもこのひっくり返し方は良いのか? という疑問はどうしても浮かんでしまう。これでOKなら何でもあり、という感じがしてしまうし。
ただ、それも含めて読んでいて常に嫌な想いを描いていき、そして、最後にはその限界を突破する。そんな嫌な予感をこれでもか、という感じさせる話だった。

No.6754

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Tag:小説感想伊岡瞬

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