著者:沙寺絃


「参加者に紛れている悪魔を殺すまで、このゲームは終わらない」 アインホルン伯爵家の令嬢ヘルミーナは、幼馴染で侍女のシャルロッテと共に古城を訪れる。婚約者のレオンハルト、エクソシストのクライン、そしてその従者たちが集まったそこで始まったのは邪神によって開催されるゲームに参加することになってしまう……
第14回講談社ラノベ文庫新人賞・佳作受賞作。
ガッツリと「人狼ゲーム」を題材にした作品。
ルールは、というと、城に閉じ込められた8人の人々。その人々に課せられた邪神のゲーム。8人の人々の中に2人、悪魔が混じっており、毎晩、1人ずつ誰かを殺していく。悪魔が活動できるのは夜だけ。人々は昼間、「誰が悪魔なのか?」という協議を行い、悪魔と思しき人間を指名し処刑する。だが、残り6人のなかにも悪魔の信奉者など役割を与えられた者がおり、そういった要素を考慮して悪魔が誰なのかを探さねばならない……というもの。本家の人狼ゲームと微妙にルールが違うかも知れないけど、基本的には人狼ゲームをしていく形になる。そんな中で、主人公であるヘルミーナは処刑されてしまうのだが……殺されるとそのゲームが始まる日まで戻ることに気づく。そして、ゲームを勝ち抜くため、自分の想い人である(同性の)シャルロッテを救うために奮闘する、という形で続いていく。
この設定の段階で、なかなかの無理ゲーっぷりはあるんだよな。
ルール上、毎日、誰かを処刑していかなければならない。しかも、当初、ヘルミーナを処刑に導き、そこで悪魔と確信した相手を2回目では処刑する。だが、それでゲームは終わらなかった。なぜなら、誰が悪魔なのか? などの役職は毎回、リセットされるため。悪魔でないときは、悪魔を探し、悪魔になった時は他者を……。だが、その中でシャルロッテを救う、ということもせねばならない。また、投票により、処刑されるはずなのに、指名された人間が他者を殺そうとした場合や、城から逃げ出そうとした場合には罰が下るために従わざるを得ない。
そもそも、4分の1の確率で悪魔になってしまう。ヘルミーナ、シャルロッテの双方が生き残る為には、二人とも悪魔か、二人とも人間かのどちらかでないとダメ。しかし、人間になった場合も、二人とも生き残る形で悪魔を上手く処刑しなければならない。人間の中には、悪魔を手助けする存在すらいるのに……。この状況からどう脱出するのか? 試行錯誤の末にたどり着いた方法は……
悪魔になったときに、文字通り、非情の存在となって相手を殺しまくるヘルミーナとか、立場によってやり方を変えるところとか、実際に巻き込まれたらそうなるんだろうな、というのは強く思う。その編の駆け引き。そんなループの中で出てくる伝承。試行錯誤の中で論理的な謎解き。先に書いたように無理ゲーな設定だからこそ、この結末へという流れも自然だし、そういうところも上手く考えられた作品だな、と感じる。
No.6755

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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「参加者に紛れている悪魔を殺すまで、このゲームは終わらない」 アインホルン伯爵家の令嬢ヘルミーナは、幼馴染で侍女のシャルロッテと共に古城を訪れる。婚約者のレオンハルト、エクソシストのクライン、そしてその従者たちが集まったそこで始まったのは邪神によって開催されるゲームに参加することになってしまう……
第14回講談社ラノベ文庫新人賞・佳作受賞作。
ガッツリと「人狼ゲーム」を題材にした作品。
ルールは、というと、城に閉じ込められた8人の人々。その人々に課せられた邪神のゲーム。8人の人々の中に2人、悪魔が混じっており、毎晩、1人ずつ誰かを殺していく。悪魔が活動できるのは夜だけ。人々は昼間、「誰が悪魔なのか?」という協議を行い、悪魔と思しき人間を指名し処刑する。だが、残り6人のなかにも悪魔の信奉者など役割を与えられた者がおり、そういった要素を考慮して悪魔が誰なのかを探さねばならない……というもの。本家の人狼ゲームと微妙にルールが違うかも知れないけど、基本的には人狼ゲームをしていく形になる。そんな中で、主人公であるヘルミーナは処刑されてしまうのだが……殺されるとそのゲームが始まる日まで戻ることに気づく。そして、ゲームを勝ち抜くため、自分の想い人である(同性の)シャルロッテを救うために奮闘する、という形で続いていく。
この設定の段階で、なかなかの無理ゲーっぷりはあるんだよな。
ルール上、毎日、誰かを処刑していかなければならない。しかも、当初、ヘルミーナを処刑に導き、そこで悪魔と確信した相手を2回目では処刑する。だが、それでゲームは終わらなかった。なぜなら、誰が悪魔なのか? などの役職は毎回、リセットされるため。悪魔でないときは、悪魔を探し、悪魔になった時は他者を……。だが、その中でシャルロッテを救う、ということもせねばならない。また、投票により、処刑されるはずなのに、指名された人間が他者を殺そうとした場合や、城から逃げ出そうとした場合には罰が下るために従わざるを得ない。
そもそも、4分の1の確率で悪魔になってしまう。ヘルミーナ、シャルロッテの双方が生き残る為には、二人とも悪魔か、二人とも人間かのどちらかでないとダメ。しかし、人間になった場合も、二人とも生き残る形で悪魔を上手く処刑しなければならない。人間の中には、悪魔を手助けする存在すらいるのに……。この状況からどう脱出するのか? 試行錯誤の末にたどり着いた方法は……
悪魔になったときに、文字通り、非情の存在となって相手を殺しまくるヘルミーナとか、立場によってやり方を変えるところとか、実際に巻き込まれたらそうなるんだろうな、というのは強く思う。その編の駆け引き。そんなループの中で出てくる伝承。試行錯誤の中で論理的な謎解き。先に書いたように無理ゲーな設定だからこそ、この結末へという流れも自然だし、そういうところも上手く考えられた作品だな、と感じる。
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