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生徒会長との待ち合わせは、いつもホテル。

著者:長友一馬



「私、パパ活してる。悪い子だから」 明るく和やかな藤沢ゆきに想いを寄せる志木颯大は、ゆきと行動を共にすることの多い生徒会長・清瀬まつりが夜の渋谷でパパ活をしている、ということを偶然、知ってしまう。ラブホテルに連れ込まれ、学校とは違った笑みを見せるまつりに秘密を守ることを強要された颯大は、その代わりにゆきとの関係を進展させるための手伝いをしてもらうことになるのだが……
滅茶苦茶久しぶりの著者の新刊。
なんというか……この巻の中で描かれる設定の強烈さとか、その中での颯大の奮闘とか、そういう部分は青春モノの王道のような感じはするのだけど、背景とか、そういうのを考えると、無茶苦茶シビアな物語だな、というのを思わずにはいられない。
まず、設定の強烈さ、で言うと、なぜ颯大がまつりの秘密を知ってしまったのか? という部分から。それは、幼馴染の姉のような存在で、学校の先生でもある透姉が(社会人なのに)学生服を着て出かけるというシーンを目撃したから。透を追って渋谷の歓楽街に行ったところで、男に絡まれているまつりと遭遇。そして、その流れで……となる。まつりが、だけでなく、幼馴染である透も、という時点でかなり強烈。そこから、粗筋で書いたような流れへと移ろっていく。
パパ活をしている、という秘密をだまっている代わりに、ゆきとの関係を進展させる手伝いをしてもらうことになった颯大。そのための指導として、行動を共にする中で知っていくまつり自身のこと。ファッションや人付き合いやら、様々なことについて熟知しているまつり。パパ活をしているが、その「パパ」に世転んでもらうための努力も欠かさない人間性。しかし、その一方で、将来の夢とか、そういうものが見えない、という彼女の本音も……
一方のまつりの側も、颯大の様々な部分を指導しながら、同時に颯大の言動によって自分の思いなどを鑑みることになっていく。そんな中……
終盤、まつりがそのパパ活によって危機に陥って、そこに颯大が現れて……で、物語としては一つの決着は付く。付くのだけど、あくまでも、目の前の一つのトラブルを解決して……というものに過ぎないんだよな……
そもそもの、まつりがパパ活なんてことをする原因である彼女の家庭の事情とかは、そのままの状態。そして、そんなまつりの事情を知っているある人物の存在……。こういうのは決して解決したわけではない。そういう点で、歪んだ部分は今なお、残っている状態。
リドルストーリーのように、その辺りを余韻として残して……となるのか、それとも続編があるのか、はわからないのだけど、そういうところも含めて、この巻はビターな青春モノ、という印象になった。

No.6757

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Tag:小説感想富士見ファンタジア文庫長友一馬

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