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今夜も愉快なナイトメア

著者:烏丸尚奇



不眠のきっかけとなる事件の真相は暴いたものの、不眠症クリニックの仕事を続けている元外科医の錦。自分をモデルにした小説が刊行されたこともあって、ますます、クリニックを訪れる患者は、奇妙な症状を訴えてきて……
というシリーズ第2作。今作も、連作短編の形式をとりつつも、最終的に繋がっていく、という形になっているのだけど、本作の方が話のまとまりはよかったんじゃないかな、という風に感じた。
まずは、毎晩のように夫から殺される、という夢を見るために不眠症になってしまった、という主婦(兼、有名ブロガー)からの依頼。その夢を見る前に、夫の兄が事故死し、その直後から夫の様子がおかしい。それまでとは違った趣味などをはじめるなど不審な行動をとり始めた。夫の兄の霊に身体を乗っ取られた? そんなはずがない、と思いつつも患者の夫を尾行し始めることにして……
作中でも言われているけど、相変わらず医者(と、看護師)の仕事じゃない! ないのだけど、患者の夫の不可解な行動を調べ、その上で、なぜそういう鼓動を取っていたのかを解き明かす。そこには、ちゃんと合理的な意味があって……という形になり、すっきりとまとめられており、好印象。
続いては、ギャラリーのオーナーからの依頼。ギャラリーに届いたのは、そこにある一枚の絵を盗むという予告状。予告状を送ってきたのは、偽物の絵画を盗んでいるという怪盗から。警察に届ければ、自分のところの絵が偽物という評判が広まってしまう。しかも、なぜかその予告は実行されないままでいて……。こちらは、真相がわかれば、あっけないものではある。あるのだけど、関係者のアリバイ捜査とかをして、お約束ともいえる「犯人はあなただ!」的なことをせざるを得ない錦の行動が楽しかった。
そして、今作で楽しいのは、前作で登場した患者が書いた、錦をモデルとした小説が妙な広がり方をしていること。決して売れている、というわけではないのだけど、看護師の水城や、錦の妹とかが周囲にどんどん布教しており、患者やら、錦の家族やらが皆読んでいる。錦じゃないけど、「まるでゴキブリ」という表現がぴったりと来て笑わせてもらった。そして、そんな中、錦が元々務めていた大学病院から、復帰しないか? という連絡が。一方で、ブラック企業勤めて心身を壊し退職したが、復職しないか? という連絡をもらった患者が現れて……
ある意味で、錦と状況が似た患者の登場。さらに、その患者の勤めていた会社が、本作で描かれた他の事件とも関わっていることが判明して、全ての謎がしっかりと回収されていく。1つ1つのエピソードだけでなく、それぞれの繋がりなどもあり、1つの物語としても完成。個人的に、モヤモヤする部分が残った1作目よりも完成度が高いと感じられた。

No.6760

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Tag:小説感想烏丸尚奇

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