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飯楽園―メシトピア― 崩食ソサエティ

著者:和ヶ原聡司



「メシトピア」 それは突如施行されたヘルスケア政策。食料自給率の向上や、健康寿命の改善を目的に行われたそれの実態は、不健康な食事や、それを接種する「不健康な人間(アディクター)」を社会から隔離・抹消する命の選択だった。そんなアディクターを取り締まる食防隊の隊員・矢坂弥登は、極限状態の中、アディクターであるニッシンの提供した禁制品・カップラーメンを口にしてしまう。その禁忌の味を知ってしまった弥登は……
物語は、冒頭、救助すら来ない場所に取り残されたニッシンと弥登のシーンから始まる。カップ麺などは禁忌の品、とされているが、食べるものがないというその状況の中でニッシンの勧めに従って、弥登はカップ麺を口にしてしまう。そして、それから半年後、追う者・追われる者という立場で再会した二人。そんな中、弥登は、カップ麺をもう一度食べたい、と隊を離脱してニッシンについていってしまう、という形で始まる。
いや、何と言うか……うーん……という感じ。
序盤の流れとかを書くと、コメディ作品のように感じるのだけど、設定としては結構、シリアスなSFという感じ。ただ、SFとしては……という感じがしてしまう。
この世界の舞台は2075年の日本。健康促進のために添加物不可、化学調味料不可、農薬不可なんていうようなものが定められた世界。それに反した食品を食べることは禁忌で、そういうものを食する者は犯罪者扱い。正直なところ、この時点で、色々と無理があると思うんだよな。だって、どう考えたって食料自給率が上がると思えないし、その結果……なんていうのも予測がつく。そんな法律を遵守させるべく活動していた弥登が、アディクター側の土地に入り、その実態を知ってショックを受ける、というシーンがあるのだけど、「いやいや……」という風に思えてしまった。
と、なんか、否定的な言葉を並べたのだけど、一方で、やりとりとかについては楽しかった。
禁忌の食を口にし、もう一度、食べたいと思った弥登。その結果、ニッシンについてアディクター側についていくわけだけど、その時の言葉が、色々と言葉足らずになって、エロ要素タップになってしまうとか、ベタだけど笑わせてもらった。
ただ、全体を考えると、設定の甘さとか、そういうところが感じられ、ちょっと物語に集中できなかったな、というのが正直な感想になる。

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Tag:小説感想電撃文庫和ヶ原聡司

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