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アガタ

著者:首藤瓜於



夜の住宅街で、女子大生が背中から刃物でめった刺しにされて殺害された。しかし、指紋はおろか、足跡もなく、防犯カメラの映像すら残っていなかった。そんな事件捜査の中、警視庁捜査一課に移動したばかりの新人刑事・青木一は、班長から、町を歩き、人々の噂に耳を傾けよ、という命を受ける。噂を探る青木は、殺害された女子大生に地元の有力者の息子が付きまとっていた、という話を聞いて接触を図るが……
久々の著者の作品……と思ったのだけど、前に読んだ『ブックキーパー 脳男』を読んだのが2021年7月だったので2年ちょっとぶりだった。2年ぶりで、そんなに時間が経っていない、という感覚になることがおかしい、というのもまた事実のように思えるのだけれども。
で、粗筋では、主人公が新米刑事の青木のように書いたのだけど、物語はどちらかと言うと、この事件を巡っての警察関係者の群像劇と言った印象。青木は、勿論、主人公の一人なのだけど、それ以外にもそれぞれの捜査員視点での物語が綴られており、それぞれで膠着した形で事件捜査が綴られていく。そんな中で、怪しげな動きをする女性・鵜飼縣も出てきて……(ちなみに、鵜飼縣は『ブックキーパー 脳男』にも登場している)
正直なところ、本作は結構、感想が書きづらい話だと思う。というのも、事件の大半は、捜査の過程に費やされるのだけど、全体を通して「雲をつかむ話」という感じなので。冒頭の粗筋に書いたように事件現場には指紋やら足跡やらと言った物証は残っていない状態。殺害状況から考えて、被害者の周辺に犯人がいるだろう、という読みがされるのだが、噂で聞いた有力者の息子に接近した青木は、そのことで有力者から抗議を受け上司から大目玉を喰らう。その他に、被害者に想いを寄せていたと思われる同級生とかも容疑者に浮上はするがこれまた、決め手に欠ける。そんな中で……
これ、前作を覚えているかどうかで、大分、印象が違うんじゃないかな? という気がする。前作を覚えているなら、縣がどういう存在で、っていうのもわかるから結構、冷静に事件を見れると思うのだけど、そうでないとちょっと唐突感が出ると思うし(ちなみに、私は、前作は忘れていました)
物語は、自らの失態で大目玉を喰らった青木が、縣の助言で……となるし、そこは示唆に富んでいると思う。人間が捜査方針を決める、となるとそこには必ずバイアスが生じるわけだから。その点は確かに、という風に。
ただ、その一方で、の終盤の話はビックリというよりも「え?」という感じ。一応、変なところは出ていたけど、ちょっと納得できないな、と言う思いを抱いた。

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Tag:小説感想首藤瓜於

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