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復讐は合法的に

著者:三日市零



6年間付き合った彼氏に手ひどく裏切られた麻友。そんな彼女に声をかけたのは「合法復讐屋」のエリス。弁護士の資格を持つエリスは、その知識を駆使して彼女の復讐を代行することになって……(『女神と負け犬』)
他、全4編を収録した連作短編集。
第21回『このミス』大賞・隠し玉作品。
うん、面白い。物語は、合法復讐屋であるエリスが、その知識などを用いて依頼をこなしていく、という話。まずは、その復讐屋であるエリスのキャラクター。冒頭の粗筋で書いたように麻友が男に裏切られたときに出会うのだが、その時は女神のような美女。しかし、翌日、エリスの事務所へ赴くとそこには男の姿のエリスが……。オネエであり、しかし、その姿は美女というそのキャラクター自体がもう強烈。そして、そんなエリスの元には、小学生の少女・メープルが働いている。こちらも、小学生なのに、一人前の秘書のような口調。そんな二人のやり取りと、その復讐の様のバージョンが多様で楽しめる。
粗筋で書いた1編目は、そのそのオーソドックスな方法論。合法的な復讐……それは、罪に問われない範囲内で相手に嫌がらせを行い、破滅させる。エリスが女性の姿で誘惑をして、会社内での評判を下げる。二股をかけていたもう一方と別れさせる。そして……
そんなところから始まって、今度は、携帯ショップの副店長の、何とでもいいわけができるような裏の仕事を、副店長視点とエリス視点を使って暴いていく2編目の『副業』。女児に対して、わいせつ事件を起こしながら逃げおおせている男を追う3編目『潜入』。周囲に色々と波紋を引き起こしている暴露系インフルエンサーの正体を探る『同類』と話が続いていくのだけど、それぞれ、物語のアプローチの形が全く異なっており、様々な角度からエリスの活躍を楽しめるというのが見事。時には、犯人側の視点でエリスに追い詰められていく恐怖だったり、はたまた、エリス自身も思惑に乗って騙されていた、というエピソードだったりという感じで。
よくよく考えると、1編目の「合法」と言う部分がだんだんと薄れていっている気がしないではないのだけど、それは些細な事。エリスとメープルの強烈なキャラクターで惹きつけ、常に新しいアプローチで物語を紡ぎだす。エンタメ性にとことん優れた作品だと感じた。

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Tag:小説感想『このミス』大賞三日市零

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