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黒い糸

著者:染井為人



BOOK☆WALKER

千葉県松戸市の結婚相談所で働くシングルマザーの平山亜紀。問題を抱えた顧客とトラブルを起こしてしまって以降、彼女の元には無言電話などの嫌がらせが起こるようになる。一方、前任が、生徒が失踪してしまうという状況で心身を病んで休職したことで、急遽、亜紀の息子・小太郎の通う6年2組の担任となった長谷川祐介。彼に対し、生徒の失踪は、クラスの生徒の母親の仕業だという推理をクラス委員長から聞かされて……
という感じで、物語は亜紀と祐介。二人の視点によって綴られていく。
目的がわからないから怖い。この作品の感想は、そこに尽きるかな?
顧客とのトラブル以降、嫌がらせを受けるようになった亜紀。嫌がらせをしてくる犯人として彼女の頭に浮かぶのは二人。自分に対して暴力を振るってきて、今なお、自分に執着している様子がうかがえる離婚した夫。そして、彼女がトラブルを起こした以前から問題を抱えた女性。どちらが犯人でもおかしくなく、しかし、決め手に欠けるままにエスカレートしていく嫌がらせ。勿論、そんな中で息子の学校の周辺でもトラブルが起こるし、息子の小太郎がしばしば癇癪を起し、学校で問題を起こすことにも頭を悩ませる。
一方の祐介。前任の突然の休職により、ロクな引継ぎもないままに担任に指名された。失踪した生徒の親は連日のように押しかけ、校長らは責任逃れ。そんな中で、クラス委員長から聞かされた推理。その保護者は決しておかしな言動などはしていないが、調べれば出てくる怪しげな噂。さらに前任の担任もまた……。そんな中、委員長が何者かに襲われる。
どちらも、責任逃れをする上司と、問題を抱えた相手とのやり取りに疲弊させられる中、次々に起こる不可解な出来事。それぞれ、怪しい人間はいるものの、だからと言って決定打はなく、ただずるずるとその嫌な状況が過熱していく。出版社の作品紹介では「ホラーサスペンス」とあるけど、怪異とか、そういうものではなく、人間のエゴとか、そういうものが介在しているであろう、という気持ち悪さ、怖さが前面に押し出されていて、イヤミスと言われるような作品群の怖さに近い印象を受ける。終盤まで、誰もが怪しく、でも誰もが犯人ではないような気がする、というさじ加減も読ませるためのスパイスになっていたかな、と言う風に感じる。
ただ、全てが判明すると、「結局、何だったの?」という感じもちょっと残るかな、と。すべての謎と言うのは解ける。その意味ではすっきりするのだけど、犯人の目的がイマイチ掘り下げられておらず、ただただ、何だったの? という感じになった。それを含めての気持ち悪さが余韻といえばその通りなのだけど……
そういう意味では、「結局、怖いのは人間」ということになるのかな?

No.6830

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Tag:小説感想染井為人

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