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逆転正義

著者:下村敦史



BOOK☆WALKER

6編を収録した短編集。
読了後にネット書店の紹介文を見たところ、「ひっくり返し」というのを一つのテーマにしているもののよう。確かにその通りだと思う。
1編目『見て見ぬふり』。教室で蔓延するクラスの中でのイジメ。自分が標的にされたくはないが、しかし、見過ごすこともできない。そこで、冬樹はクラスの中でのイジメガ起きていると担任に訴える。だが、訴えを受けた担任の態度は煮え切らない。そこで今度は卒業生の先輩に相談をするが、そこで提案されたのは、そのイジメの映像をSNSに流す、ということで……
正直なところ、このひっくり返しは予想ができない、というか、ちょっと強引な気はする。ただ、色々と社会問題を孕んだ話だな、というのを感じる。学校内で起こるイジメと、それに及び腰な教師という昔からある構図。そして、ならばネットに……というやり方。「正義」を名乗る人間が誰なのかを特定し、集中砲火。さらに、イジメ対策と言う言葉の難しさ。そういう諸々の問題提起にはなっていると感じる。
3編目『完黙』。コカインの密売人である大重。逮捕された彼は、取り調べに対し沈黙を守り、実刑を受ける。その結果……。これは、ある意味、昔のヤクザ映画とか、ああいうものにも通じるものがあるな、という印象。逮捕されても、大事な情報は漏らさない。当然、法的な罪は重くなるが、しかし、裏社会での評価は高まる。大重もまた、そのことで評価が上がった。でも、その目的は……。昔ながらの暴力団組織とかならともかく、現在のようにネットなどを通じての闇バイトとか、そういうものがある中、大重のような目的を持っていたとしたら……こうするしかないのかも知れない。
6編目『死は朝、羽ばたく』。刑務所から出てきた奥村。そんな彼に悪ガキたちが声をかける。「人殺しと周囲に触れられたくなければ金を払え」と。拒否する奥村だったが、悪ガキたちは執拗に奥村の周囲に付きまとい……
まずこのエピソードで思ったのは、悪ガキたちの、本当に悪知恵。刑務所から出た。そうは言っても、多くの人間は刑期満了ではなく、罪を犯せば逆戻りの仮釈放。もし、暴れたりすれば、それが罪となって仮釈放が取り消されてしまう。さらに、就職とか、そういう部分で過去に触れられたくない。それを使った、というのは(悪い意味で)お見事。そんな中でも拒否をし、しかし、自分は人を殺したという奥村の罪とは……
これもひっくり返しとしてはちょっと強引な気はする。ただ、仮釈放というシステムを悪用する存在。さらに、奥村の「人殺し」の意味するもの、については色々と考えさせられた。

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Tag:小説感想下村敦史

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