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(書評)蛇棺葬

著者:三津田信三

蛇棺葬 (講談社ノベルス)蛇棺葬 (講談社ノベルス)
(2003/09)
三津田 信三

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5歳のとき、私は父に連れられ、父の実家・百巳家へと来た。認知症を患った祖母、能面のような義母、自分と同じような状況に置かれた民婆…。その中で私は暮らしていた。そして、その裏山に不気味な気配を漂わせる「百蛇堂」と言う建物がある…。
どういう風に本作を紹介しよう。それをまず名乗る。
物語の筋は、冒頭に書いたように、父の実家へと帰った幼い「私」が出会う体験。「…け」という語尾が特徴の方言、独特のヒエラルキーのある地域、そこで語られる数々の怪異と、そこに纏わる儀式。そして起こった父の失踪…。それから二十数年後、戻ってきた「私」が父と同じことをすることになり…となる。
ジャンルを分けるのならば、ミステリと言えるのかも知れない。一応の解決編は示される。ただ、その解決編が本当なのか、についてはわからず、数々の謎も残る。何よりも、主人公である「私」が語るように「冷静に考えれば…」と言う状況にも関わらず、それを許さないだけの雰囲気、世界観へと誘われてしまう。その部分こそが、本作の魅力のように思えてならない。
それを象徴するのが、民婆と言う存在だと思う。百巳家の血筋の者の乳母を務めながらも、今は影の存在。けれども、伝承に詳しく、「私」に様々なことを教え、導いてくれる保護者。そして、葬儀の際にのみ、家を取り仕切る存在になる人…。そんな民婆と「私」の交流、そこでの教えが、作品の雰囲気、世界観に読者を誘ってくれ、そして、その最期が印象に残る。ある意味では、本作は民婆の物語ではないか、とすら思えてきた。
本作で残った謎などは、姉妹作(というよりも、2冊でセットらしい)の『百蛇堂』に引き継がれるということなので、続けて、そちらも読もうと思う。

通算1316冊目

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