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帆船軍艦の殺人

著者:岡本好貴



BOOK☆WALKER

1795年、フランスとの長きに渡る戦いによってイギリス海軍は深刻な兵士不足に悩んでいた。そんな中、戦列艦ハルバート号は一般兵に対する強制徴募を実行する。そんな強制徴募によってハルバート号の水兵になってしまった靴職人のネビルは、身重の妻を心配しながらも、水兵としての厳しい日々を送ることになる。だが、そんなある新月の夜、隣のハンモックで寝ていた水兵が何者かに殺害されて……
第33回鮎川哲也賞受賞作。
こうやって書くと、無理やり、水兵にさせられたネビルが船内で起きた殺人を解明する物語のように見えるのだけど、実はそうでもなかったりする。物語の軸としては二つで、ネビルの水兵として日々。そして、5等海尉であるヴァーノンが殺人事件を解明するパート。その二つで進行していく。
まず、ネビル。仕事を終え、仲間たちと共に酒場で飲んでいるときに、強制徴募の兵たちに拉致され、船へと連れてこられてしまう。いきなり始まる厳しい訓練。さらに、食事は、というと虫の湧いたクッキーだったり、塩漬けの肉だったりと癖のあるものばかり。さらに、寝室も雑魚寝……どころか、空間を作るために何十人がハンモックで上下すら入れ替えて詰め込まれての就寝。そんな中で、船から逃げ出そう、という計画に誘われて……
文字通り、船の中での過酷な日々。その中での不平などもあり、そこからの脱出を図る。軍隊もの、特に海軍みたいなものは、船の乗組員は家族みたいな描き方をされることがあるからこその、この状況と言うのが印象に残った。
そして、もう一方の謎解き。寝室での事件に続き、船倉で第二の、さらに、懲罰房で……と、次々と発生する殺人。船内に犯人がいることは明らか。それを解明しなければ、大きな反乱にも繋がりかねない。だが、メイントリックとなる不可能殺人があったり、船内における立場の違いなどがあったりと、船内政治とでも言うべきものが立ちはだかる。それでも、水兵出身で、その気持ちにも配慮したヴァーノンが導き出した真相は……
ネビルとヴァーノン。主人公と言える存在が二人いることで、物語としてどちらをメインにしたかったのかな? と思う部分はちょっと残った。
ただ、当時の軍艦における状況とか、本格モノとしての殺人の謎解き。そういうものはしっかりとしており、これはこれで面白かった。

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Tag:小説感想岡本好貴

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