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100年のレシピ

著者:友井羊

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2019年11月。理央は突然、恋人から別れを告げられた。「手料理を食べたい」という恋人のリクエストに応えようとして大失敗した結果だった。元彼に未練のある理央は、実家にレシピ本があった著名な料理研究家・大河弘子の作った料理学を受講することに。その学校で、弘子の曾孫である大河翔吾と出会い……(『2020年のポテトサラダ』)
という形で始まる連作短編形式の物語。
1編目が表題作になるのだけど、冒頭に書いた形で物語が始まる。しかし、折りしもののコロナ禍。外出自粛が要請され、母は実家に赴いたまま帰宅できない。そんな中で、病に倒れた祖母の介護を理央は自分だけが担うことに。そんな中、理央は味覚に異変を感じて……。このエピソードは、所謂ヤングケアラーの問題とか、そういうものを含んだ話ではある。介護などに無理解な父。自分が頑張らねば、という理央。だが、そこには当然のように無理が……。料理に関する蘊蓄と、社会問題、そして、理央を心配する人間の優しさ。それぞれがかみ合った結末が良かった。
そして、その1編目の最後に、大河弘子が亡くなる、ということになり、理央は弘子のことを知るために過去を知る者に話を聞くことに……
2編目『2004年の料理教室』。有名料理店のステーキ丼定食を食べた子供が、アレルギー発作で倒れた。その子供は牛乳にアレルギーがあり、朝食はそれに対応したもの。食べたとしたら、そのステーキ丼定食しかありえない。しかし、ステーキ丼には牛乳は使われていない。その一方で、なぜかそのタイミングで数量限定になってしまっている。これが意味しているものは? さらに、その子供が口にした「変なにおいがした」と言う言葉の意味は……
まぁ、原因がステーキ丼だ、ということは明白。その上で、匂い、というヒントから、その理由について明らかにしてしまう弘子は、やはり著名な料理研究家としての経験・知識が豊富なのだな、と感じさせる。さらに作中で、実在の事件なんかも描かれているけど、そういう問題が色々とクローズアップされた時代だったな、というのを思い出した。
そんな感じで、2020年から、2004年、1985年、1965年……と年代をさかのぼって、弘子が遭遇した不可思議な出来事と、その真相というのが描かれていく。しかし、その中3つほどの謎が残る。一つは、それらのエピソードの中で常に一貫して描かれる、ある共通点。弘子がそのことを問題視する理由は何か? 次に、理央の実家がなぜか大河弘子を昔から知っていたように感じられる理由。そして、多くのテレビ出演、著書執筆などをしながらも、弘子自身はなぜかその前半生を語っていないという謎。それらが、『1947年のじゃがいもサラダ』で、弘子自身の回想として語られる。
弘子が学生時代、仲良くしていた友人が使用人として働いていた家から解雇された。その主人は、癇癪もちで、周囲からは問題視されている人物。友人の仇を取るため、料理人としてその家へと入るのだが……
確かに、どちらかと言えば不器用で、失敗の多かった友人。しかし、努力家でもあった。弘子はだからこそ、彼女のことが好きだった。そして、それは……
若き日の、自信の罪がその後に繋がっていった。さらに、そんな弘子が、亡くなる直前に一つの希望を見出すことが出来ていた。各編は、それぞれ独立して楽しめるのだけど、しっかりとすべてが結びついて終わるのは、長編としての面白みと言うのもしっかりとあるな、と感じた。

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Tag:小説感想友井羊

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