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同じ星の下に

著者:八重野統摩

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BOOK☆WALKER

12月、北海道に住む少女・沙耶は下校途中、児童相談所の職員を名乗る渡辺と言う男に拉致される。営利誘拐で、両親に対して2000万円の身代金を要求する犯行声明を出す渡辺。だが、当初の物言いとは異なり、渡辺はただ純粋に沙耶の健康などを気にかけてきて……
物語は、渡辺と言う男に誘拐・監禁されてしまった少女・沙耶と、犯行予告が届き、捜査に当たる北海道警の刑事・進藤の視点で綴られていく。
両親……とはいえ、全く自分を愛しているとは思えない親の下で暮らす沙耶。粗暴で、酒を飲んでは暴力をふるってくる父親と、それを見て見ぬふりをする母。家は貧乏で、かろうじて自分の部屋はあるが、まともな勉強机すらなく、娯楽と言えば50円、100円で買った古い文庫小説くらい。さらに、学校の勉強は好きだが、中学を出たら働いて家に金を入れろ、などと迫られる。そんな状況の自分を誘拐などしても、身代金など払うとは思えない。いや、それどころかむしろ……
そんな沙耶を誘拐した渡辺。家へと監禁するまでは確かに底知れぬ恐ろしさを見せていたが、しかし、その後は、というと……。暖かな手料理を振る舞い、健康を気遣う。沙耶が体調を崩した時には、仕事を休んでまで看病をする。それは、これまでの沙耶の人生で一度も出会ったことのない暖かさ。少しずつ渡辺に惹かれていく。そして、その中で、自分は渡辺の娘なのではないか? と思うように……
一方、道警に届いた犯行声明を元に捜査を開始する進藤たち。沙耶の両親に問いただす進藤が感じるのは、どうしようもない薄っぺらさ。数日前から中学生の娘が帰宅していないというのに、全く心配している様子がない。これが、東京などであればまだしも、北海道の田舎町。12月であれば、どこかで凍死なんてことだってあり得るというのに……。さらに、2000万円という身代金についても、ただ金がないと突っぱねる。本当に彼らは人の親なのか? 沙耶の置かれた状況と言うのが、進藤らの目を通すことで、はっきりとわかっていく流れがとにかくつらい。
そして、その中でどうしても思うのは、渡辺の目的は一体何なのか? ということ。そんな中、いよいよ取引の日はやってきて……
渡辺の狙いはともかく、その背景とか、そういうのはちょっと後付けっぽい感じは残るかな。ただ、日常と誘拐されたときと言う非日常の中に起こる倒錯した状況。だからこそ感じる沙耶の絶望感。決して、渡辺の行動は許されるものではないが、しかし、それによって多くの「救い」が生まれたこと。その辺りの状況に、色々と思いを巡らせた。

No.6850

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Tag:小説感想八重野統摩

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