著者:五條瑛
腹違いの兄らと、父の後継者争いをする長谷川満夫。「運命的な出会い」をした占い師・ドゥルダの言葉に従い、母の行方を捜す。そして、そこから父の秘密へと迫っていく…。一方、学校に通うようになったすみれは、同じクラスの苛められっ子、長谷川俊太の母を捜すことになり…
「R/EVOLUTION」、「革命」シリーズ第5弾。
シリーズも折り返し、のところまで来た今回の主人公は、長谷川兄弟。第二次大戦の最中に、阿片で大きく儲け、その財を元にした一大勢力を誇る長谷川グループ。その後継者候補の満夫と、末っ子・俊太。ただ、別れた母に会いたい俊太と、ただ、母を捜したところから後継者となるためのアドバンテージへの鍵を見つけた満夫。けれども、両者の裏にはドゥルダが、すみれが、そして、サーシャが…。
シリーズの中で、「愚かだ…」というような感想を書いたことはこれまでにも合ったけれども、ある意味では、本作の主人公・長谷川満夫は最たるものなのかも知れない。ドゥルダ、サーシャによって操られていることも知らずに、ただ権力争いのために、動く満夫。サーシャにとっては、その兄弟の誰でも良い。ただ、良い手駒を手に入れるだけのこと。けれども、それを知らず、ただ、自らを誇る…。父の秘密を知り、衝撃を受けても、結局、自らが優位になったと浮かれるだけ。勿論、これは「読者だから」の感想ではあるが、ラストシーンの彼の愚かさを痛烈に感じざるを得ない。
その一方で、タイトルでもある「愛罪」の意味。長谷川グループ会長の抱える秘密。妻との関係と、それ故に狂った行動。こちらも愚かであるが、満夫のそれともまた違った一種の狂気を感じる。さらに、その周囲で堕ちていった聖美、ヤスフミのため、で動くエナ、そして、エナのために、のハーシー…などなど…。サーシャがすみれに語った言葉ではないけれども、「愛しているから幸せ」とは程遠い状況へと堕ちていく…。前作の『
恋刃』も、堕ちていく様を描いた作品ではあったが、本作のそれはさらに破滅的と言えるのかも知れない。
着実に進んできたサーシャの計画と、堕ちていく人々。中盤まで来たわけだが、その結末が気になってきた。
通算1318冊目
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