著者:翔田寛
明治4年1月9日未明、政府太政官参議・広沢真臣が殺害される。刑部省逮部副長の佐伯は、その事件の捜査にあたる。だが、同じく捜査権を持つ弾正台との対立。そして、その中で見たのは…
まず、いきなり自分の恥をさらす事になるのだが、私は本書を読むまで、この歴史上の事件、広沢真臣と言う人物を知らなかった。本書は、その歴史の闇に一つの回答を試みる、という形での楽しみ方が出来るはずなのだが、私はそれが出来なかった。それが非常に残念。
と言いつつ、作品としては非常に面白い。
出来たばかりの明治政府の最高権力者とも言うべき人物の暗殺事件。現場は、荒らされた後があり、広沢には拷問の痕跡。火をつけながらも中途半端にとめられた後。さらに、縛られたままで生き残った妾…。何もかもが中途半端な、チグハグとした状況での事件。ただの物取か、クーデタか? さらに、「呪い」の絵巻の存在へ…
実在の事件、それが題材になっているわけだが、それとは別に、この明治4年と言う時代が物語に深みを与えている。明治政府と言う新体制が出来上がったものの、まだ、戊辰戦争の傷痕は深い。それは、倒幕運動での策略、続いた戦争が人々に与えた傷。主人公である佐伯も、その戦争による傷は深く残っている。そして、犯人、事件の背景にも…
真相にいたるところでの人間関係があまりに近すぎて、ちょっと違和感、混乱を来したところがあったのだけど、欠点と感じたのはそれだけ。時代の空気などを含めて、非常に面白い作品だと思う。
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テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学
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