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羅針盤の殺意 天久鷹央の推理カルテ

著者:知念実希人

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御子神氷魚。帝都大学の元主任教授であり、現在は総合病院の院長である彼女は、天久鷹央が唯一「先生」と呼ぶ存在。それもそのはず、同じ個性を持ち、鷹央に「診断医」という道を示した存在だからだ。そんな氷魚が不治の病に置かれた中、鷹央の周囲では奇妙な事件が起こり……
シリーズ第15弾で、久々の「推理カルテ」名義の作品。実質、3編を収録した短編形式。
1編目『禁断の果実』。鷹央の元に診断してほしい、として入ったのは、毎年、春先になると肝炎を起こしてしまうという少年について。彼は甲殻類、軟体類に関するアレルギーを持っているがそれについては、家族も十分に注意しており、本人も口にしていないという。さらに、中学時代は肝炎に苦しむことがなかったが、高校に入り、再び……
このエピソードの病については、いつも通り、鷹央がズバリと言い当てて……ということになるのだけど、それ以上に、この話の決着のつけ方が印象的だったかな。作中でも出ているのだけど、鷹央は、コミュニケーションというものが苦手で、良くも悪くもストレートにものを言ってしまう。そんな彼女が、この少年に配慮した形で決着をつける、というのは、成長を感じさせるし、また、この巻の中心になる恩師とのやり取りにも通じるものがあった。
2編目『七色の猫』。ある日、鷹央は、何者かによって身体に塗料を塗られた猫を保護する。その猫を獣医の元に連れていくと、最近、この近辺では同じような被害にあった猫が多数見つかっているのだと言うが……
こちらは、メタ的な言い方をすると、読者を上手く弄んだ話だな、と感じる。このシリーズ(というか、著者の作品全体の傾向として)、一般人である読者が「そんな病があったの!?」というような特殊な病などを紹介しつつ……という部分がある。そして、このエピソードも……と思ったところで……。勿論、鷹央の知識の幅が物凄いからこその仕掛けではあるのだけど、ある意味、犯人に同情してしまうオチではある。
そして、3編目であり、本作のメインである『遺された挑戦状』。そこまでの2編でも登場した鷹央の恩師、御子神氷魚が急死した。その現場は地下のカルテ庫であり、現場に積もった埃から密室状態。死因は脳梗塞ということで病死とされたが……
このエピソードは、密室殺人の謎、そして、鷹央の掘り下げ、どちらをも含んだエピソードだったと言えると思う。密室状態での脳梗塞。それだけをとれば、病死なのだけど、人為的にできるのだ、という医学的知識に基づいた謎解き。そして、そんな事件の背景にあった狙い。事件を巡っての師弟関係。さらに、そんな氷魚と鷹央の関係のように、鷹央と小鳥遊の間にも……。ちょっと苦い部分はあるが、しかし、鷹央自身の掘り下げ、さらに、鷹央と小鳥遊の関係性の掘り下げへと発展させた終わり方は、シリーズ全体へと意味を為しそうな印象だった。

No.6920

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Tag:小説感想知念実希人

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