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案山子の村の殺人

著者:楠谷佑

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従兄の篠倉真舟と共に作家「楠谷佑」として活動している宇月理久は、取材のために友人の秀島旅路の実家が経営する温泉宿を訪れる。秩父地域にある旧宵待村は、沢山の案山子があることで有名。しかし、そこでは、毒を塗ったボウガンで動物を殺す違法ハンター、さらには案山子が消失する、という事件が起きていた。そして、記録的な大雪の日、ついに殺人が発生して……
実に丁寧な本格ミステリだな、というのが何よりも思ったこと。
冒頭に書いた通り、友人の実家である宵待村を訪れた理久と真舟。田舎町の空気を肌で知りたい、という目的だったが、その当初から、村を代表する造り酒屋の息子と、潰れてしまった元酒屋の息子のイザコザを目の当たりにしたり、神社の階段から転落死した大学生の話題などを目にする。さらに、村で起きている奇妙な出来事。そんな中で、事件が……
遺体は、毒の塗られたボウガンで撃たれて死亡しており、そこにはなぜかなかったはずの案山子が。さらに、遺体の元へは被害者がつけたと思しき足跡だけ……。
400頁ほどと、結構なボリュームがあるのだけど、作中で起きる殺人は2つだけ。そして、その事件の不可解な点、さらには関係者のアリバイなどをひたすらに考察していく、という形で物語が進んでいく。どうやって雪の密室が作られたのか? しかし、そもそも、そんな密室を作る理由とは? さらに、案山子は一体、どうして現れたり消えたりするのか? それらを主人公二人のやり取りで論理的に考察をしていくのだけど、机上の空論とでも言うべきものがあったり、はたまた、理久と真舟の二人で考えた理由について他者の話を聞くと思わぬ穴があったり……と、論理で考えても上手くいかない部分が多々あるのが楽しい。さらには、村という狭い社会だからこその色々とこじれた人間関係なんてものも影響しているのか? という考察もして……。本格モノは、論理優先で……みたいな話を聞くことがあるけれども、こういう描写は、そんな意見に対するアンサーなのかも、と感じられる。
そして、事件全体を通しての考察。
これは、作品の構成自体が、そういう方向で進んでいくので仕方がない部分があるのだけど、確かにちょっと考えてみると、全く別の可能性っていうのを否定してはダメなんだよな。メイントリックと共に、このミスリードの巧みさというのが上手くはまった構成の作品になっている。
最初に書いたように、丁寧に、でも、じゃあ冗長になるか、というとそんなこともない。面白かった。

No.6924

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Tag:小説感想楠谷佑

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