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少女が最後に見た蛍

著者:天祢涼

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BOOK☆WALKER

仲田・真壁シリーズ第4作目にあたる短編集。全5編を収録。
1編目『十七歳の目撃』。弁護士を目指す弘明は、塾の帰り道、近所で頻発しているひったくり事件の現場を目撃する。犯人は、目出し帽をかぶっていたが、そこから見出したのは、同じ学校の生徒で暮らすの中心である礼都だった。翌日、礼都からそのことを言うな、とプレッシャーをかけられるのだが……
決して裕福ではない母子家庭に育ち、大学受験のチャンスは1度だけ。そして、礼都は留年した同級生を追い込み、不登校へと追いやった張本人でもある。そんな中、弘明の前に現れた仲田蛍。これらの状況から、何事もなく過ごしたいと礼都を口にしないのではないかと考える仲田だったが……。「新学年になるまでは」そんな言葉で自らを律する弘明。しかし、彼は、不登校に追い込まれた同級生の元へも向っていたことから真相へとたどり着く。ある目的をもって口を閉ざす弘明と、そんな彼を落とすために……という仲田。仲田と弘明、どちらの言い分もわかるのだけど、弘明が弁護士になる。それも、「良い弁護士に」という仲田の想いが印象に残る。
2編目『初恋の彼は、あの日あのとき』。飲み会でかつての旧友と再会した仲田。そこで話題になったのは、クラスの優等生・九十九リクは仲田のことが好きだったのではないか? というもの。当時のことを思いだす仲田たちだったが……
まず言うと、この話に出てくる教師。自分もこんなクズに当たったな……というのを思い出した。厳しい、と言えば聞こえはよいが、叱ったりする基準などが本人の気分次第。しかも、何かがあれば連帯責任を問うてくる。そんな中、転校生である仲田は教師に抗議して……
なんか途中までは、小学生時代の思い出話、という感じったのだけど最後の最後に仲田が示唆したのは……。ちょっとした描写から文字通り、思わぬ結末へ。ひっくり返し、という意味では、この話が一番、強烈だった。
そして、そんな仲田の過去の後悔を描いた表題作。
中学時代、仲良くしていた桐山蛍子。クラスメイトである来栖楓にいじめられており、彼女を守ろうとしたが、しかし、守り切れず彼女は自殺した。中途半端に希望を与えたことが……そんな後悔を抱える仲田。しかし、その裏にあったのは……
作中、何度か「いじめ」について語っている仲田。蛍子の視点で綴られる苦しみ。及び腰な学校の教師。そして、蛍子自身に囁かれた来栖からの言葉……。別の意味での「中途半端な希望」と、残酷すぎる最期……。この話自身は長編にしてもよかったんじゃないかという木がするんだけど、でも、短編エピソードとして読んでも苦しいだけに、長編でなくてよかったような気がするのもまた事実。
とは言え、本作は仲田という人物のルーツが大きく描かれた話ともいえると思う。

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Tag:小説感想天祢涼

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