fc2ブログ

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 巡る季節のミネストローネ

著者:友井羊

Amazon
BOOK☆WALKER

早朝にひっそりと営業しているスープ屋「しずく」。常連客である理恵は、ついにシェフである麻野に想いを告げる。そんな理恵に対し、麻野は「待ってほしい」と言われ……
というプロローグから始まる連作短編シリーズ第8作。全4編を収録。
プロローグがいきなり理恵の告白シーンから始まるのだけど、本編はいつも通り。
1編目『春待つ芽吹き』。春、慎哉の勧めにより、麻野らと共に山菜採りへと参加することになった理恵。一通りの採取を終了し、山の持ち主で、いつもキッチンを借りている老人の家を訪れるが、そこで知ったのは、その老人が数か月前に急死していたこと。老人の孫を名乗る女性は、祖父はこの家に「お宝」を遺している、ということだったのだが……
このエピソードは二段階の話が印象的。老人の孫を名乗るが、何かおかしなところのある彼女の正体。それを山菜に纏わる知識で喝破し、さらに焦点である「お宝」の正体へ。本来、麻野の専門分野ではないけれども、料理の知識から応用して。そして、その孫の職業から、という流れが見事だった。
露の友人・亜子が弁論大会の代表になったが……という3編目『秋に君の言葉を聞きたい』。かつて、亜子は感情の抑制が聞かず、相手をひっかいてしまう、というようなことをした時期があった。そのときの記憶は多くの人に戻っている。そして、代表を争った同級生の身体に蚯蚓腫れが出来ていたことから、ライバルをひっかいたのではないか? という噂が流れて……という話。
このエピソードは、謎解きそのものは、このシリーズの定番だな、という感じ。パターンから、こうだろうと予測できたし。ただ、理恵視点が基本のこのシリーズで、麻野の娘・露視点で、というのが新鮮だった。
そして、4編目『答えは冬に語られる』。余った食材をフードバンクに寄付しようと考えた麻野。だが、そこで告げられたのは麻野の亡き妻が、一人の少女をきつく取り押さえたことがあったという話題。警察官であった麻野の妻。しかし、そのようなことをする人物ではない。麻野はわからない、と態度を保留するが、理恵はそのことを調べて……
このエピソードで、プロローグと物語が繋がることに。その謎自体もさることながら、季節の移ろいと共に物語が描かれているはずなのにちょっと残る「?」とか、そういうものが結びついていく。そして、麻野の亡き妻への疑念を晴らすことで、麻野への自らの想いを表現することとなった理恵。短編形式ではあるが、そこ自体の仕掛け、というのが印象に残る。
これでシリーズ完結編という感じもしないでもないような終わり方。ただ、それだとちょっとあっさりとしすぎな気もするので、もう1作くらい出るのかな?

No.6933

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想友井羊

COMMENT 0