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四面の阿修羅

著者:吉田恭教

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晴海ふ頭近くの空き地で、男性のバラバラ遺体が発見された。顔には「生ゴミ」という貼り紙までされ、解剖の結果、その傷にはすべて生活反応が。被害者は生きたまま四肢を切られたことが判明する。そんな中、捜査を担当する東條有紀の前に、タブロイド紙の記者・工藤夏美が現れて……
槙野・東條シリーズ第7作。とは言え、今回はほぼ東條有紀のみの物語。
冒頭に書いたように晴海ふ頭近くで発見されたバラバラ遺体。被害者は素行が悪く、前歴もある、ということは判明したという中、東條の前に現れた工藤は、情報交換を持ち掛ける。そして、その場で、被害者は3年前のOL殺害事件の犯人の知人であると知らされる。そして、そこから、そのOLの元同僚、さらにはそのときに証言をしていた最初の被害者周辺で失踪者が出ていることがわかり……
殺人の被害者、さらには加害者側……それぞれの中に見えてくる接点。そこにあったのは4年前に起きた交通事故ということが見えてくる。しかし、繋がりは見えてきても、立場としては相反する双方から死者、さらに行方不明者が次々と。一体、そこで何が起きているのか?
さらに、その中で、被害者の一人が東條自身とも因縁のある相手であることが判明し……
繋がりは見えてきても、しかし、犯人が一体、何を目的としているのかがわからないというもどかしさ。さらに、警戒心が強く常にボディガードをつけていたはずの暴力団員が殺害されたという不可解な謎も登場。ハウダニットという部分もさることながら、フーダニットの方が混迷を続けていく様に惹きつけられた。その中でようやく見つけた突破口だったが……
物語が終わってみると、物語の中心人物とでも言うべき存在の闇の深さが印象に残る。とにかく、短絡的で、自己中心的で、しかし、行動力だけは極めて優秀。そんな存在に翻弄され、命を落としていった面々。その中で、文字通りの阿修羅と化した人間。主人公である東條が、一度は犯人に同情し、しかし、その残虐な行為に考えを改め、でも……という心情の変化があるのだけど、読者としてもそれと同じ気分になってくる。
作中で描かれる拷問シーンとか、結構、グロテスクな部分もあるのだけど、それでも面白かった。東條と情報交換をする新キャラ・工藤もなかなか魅力的な存在だったし。
と言ったところで、前作、『MEMORY 螺旋の記憶』の引きにあった槙野側での引き。これが全く解消されていないのだけど、これは次回作へ、ってことなのかな?

No.6935

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Tag:小説感想吉田恭教

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