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一線の湖

著者:砥上裕將

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篠田千瑛と争った湖山賞から2年。大学3年となった青山霜介は、水墨画家として成長をしつつも、自らの進路に悩んでいた。水墨画家として生きるべきなのか、それとも別の食に就くべきなのか。そんな中、篠山湖山の弟子による揮毫会で霜介は大失敗をしてしまい……
著者のデビュー作である『線は、僕を描く』の続編……というか、2年後を描いた作品。
前作は何よりも「水墨画とは何か?」という部分が印象的だったのだけど、今回は文字通りに霜介の画家としての、いや、人間的な成長というのが印象的。
粗筋でも書いた通り、湖山賞を受賞し、水墨画家としてさらなる精進をしている霜介。しかし、千瑛が水墨画の新星として活躍する中、自分は一体、どうすべきなのか迷っている。さらに、揮毫会で失敗をし師である湖山から「しばらく筆をおけ」と言われてしまう。だが、それでも、一人、修行に励む日々。そんな中、兄弟子である西濱から、小学校への水墨画講座をすることになって……
小学生に教える中で、霜介自身が学んだこと。思わぬ形で筆を握ることが出来なくなった日々。その中で出会った、湖山の元を去っていった兄弟子との邂逅。師匠から託された一本の筆。思わぬ形で知った亡き母親の足跡……。そんな様々な出来事が霜介の前に起きたことによって、彼自身が知ること。そして、少しずつ定まっていく自らの進むべき先。
画家としての活動って、そもそものところで、安定した職とは言えないし、また、自由と言えば聞こえが良いが、それを活かせるかどうかは状況による。ただ「自由だ」と言われても、却って迷いの中に突入してしまう。さらに、技術というのは修練によって得ることはできる。けれども、修練を重ね、技術だけが身についた時にできてしまうのは……
前作同様、湖山を始めとして、周囲の面々は霜介に対して非常に優しい。けれども、その大事なことについて、軽いヒントは与えても解くことはしない。勿論、言葉で説いたところでそれに納得できるのか、と言えば違うって言うのもあるだろう。その辺りの霜介を上手く導いていく過程、その中での成長が何よりも印象的だった。
……しかし、霜介の決めた進路。大学3年でその進路。……可能なのだろうか? とちょっと思ってしまったり……

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Tag:小説感想砥上裕將

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