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薬師寺ロミの推理処方せん

著者:平野俊彦

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大学附属病院の前で営業をする成都調剤薬局。そこに勤める薬師寺ロミはおせっかいで、ちょっと短気な薬剤師。いつかは難病治療の研究に携わりたいと思っている彼女の前には……という連作短編集。全6編を収録。。
著者の作品を読むのはこれで3作目。本作は薬科大の名誉教授という著者の得意分野で勝負してきたな、という感じ。薬剤師の仕事……勿論、その中では、病院から出された処方箋に従って薬を処方する。その際に問診などをし、本当に患者に良い薬なのか? なんていうことを考えて……というのが中心にはなるのだけど、薬学部に通う学生相手の研修だったりとか、そういう業務も。
中でも、ロミが学生に行う「薬学トリビア」という名の講義。これ、もしかして、著者が教授時代に授業でやっていたんじゃなかろうか? なんていうことを思ったりして。
そんな1編目『肺の腫瘍が消えた!』。ロミの元を訪れた患者2人。一人は、肺にあった影が消えたと明るい表情。一方の患者は、肺に影が、と落ち込んだ表情。二人は名前もそっくりで、同じ病院の同じ医師の診察を受けていた……。勿論、これは読者の側でも、「患者の取り違えでは?」と思うところだけど、問い合わせに対し、それはないと医師は断言。それは……。これ、2編目、3編目くらいの方が良かったんじゃないか、とまず思ったり。ちょっとモヤモヤとする結末なだけに。まぁ、実際の医学の現場でも、なんかよくわからないけど、っていうことは多いのだろうけど。
個人的に好きなのは3編目『冷めた実習生』。ロミの元に実習生としてやってきた大学生・森野。薬学の知識は抜群で、物覚えも良い。しかし、どうにも冷めた態度で、薬剤師なんてロボットでもできる仕事と言い放つ。なぜ、彼はそんなに冷めているのか?
あんまり考えたことがないけれども、薬学部に入る学生の中には、別の方面を目指していて……という人もいるのは盲点だった。そして、先に書いた薬剤師の日常を見ると、医者の下請けのように思える部分も。丁度、ネットとかの中でも、ロボットで十分みたいな意見もあるし。そこへのアンサーと言えるようなエピソードだな、と感じた。
4編目『しばたたく患者』も、3編目のエピソードをさらに広げたような印象。ロミの元へ患者としてやってきた男性。自分は、薬学部の研究者で、薬剤師でもある。だから薬の効能などもわかっており、説明は不要という。しかし、ちゃんと薬を服薬しているのに病状は良くならない。そんな中で、ロミは……。3編目の「ロボットで十分」じゃないけど、その道の専門家であっても……の見落としがある。第三者が関わる必要性。それを感じさせる。
ただ、その後は、ちょっと医学研究とか、そっちの方向に行ってしまったかな? という印象。6編目は病院の専門薬剤師として、治療に用いる薬とかに関わるし、その中での問題提起とかもあるのだけど、5編目は(関連性はあるけど)ちょっと別分野の話のように感じられたため……
薬剤師がテーマのミステリというと、相手の病などを見破って、というタイプのイメージだけど、薬剤師の色々な面を見せてくれた、という意味で興味を惹かれる部分が多かった作品だな、とは感じる。

No.6939

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Tag:小説感想平野俊彦

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