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最後のページをめくるまで

著者:水生大海

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BOOK☆WALKER

「どんでん返し」をテーマにした短編を収録した作品集。全5編を収録。
1編目『使い勝手のいい女』。勤めていた会社が倒産し、ホームセンターでアルバイトをし、糊口をしのいでいる葉月。そんな彼女の元を訪れたのは、学生時代の恋人で友人と浮気をして別れた智哉。嫌がる葉月の元へ転がりこもうとするが……。そんな直後、今度は智哉を寝取ったかつての友人・加奈まで現れ……
このエピソードはひっくり返し、というよりも、シュールな作品だな、という印象。妙に馴れ馴れしい智哉。さらに、自分が寝取ったくせに図々しくもやってきた加奈。加奈に浴室を見せられないが、なぜか加奈はずっと部屋に居続けようとして……。かつての恋人、友人から恋敵になった相手。その感情描写が嫌な感じで……での真相。ひっくり返しよりも真相で、葉月がやろうとしていたことがシュールすぎる。さらに、オチ。タイトルがここにかかってくるのか、という感じ。
2編目『骨になったら』。妻の葬儀に向かう医師の公人。彼の頭にあるのは、このまま無事に火葬されれば……という思い。そして、その中で頭に浮かぶのは、壊れていく妻の姿だった……。病院経営者の娘と結婚をし、子供も生まれた。しかし、その子供を失い、妻は精神のバランスを崩していった。そんな中、かつて親身に世話をした女性と関係を持ってしまい……。基本的に、利己的な存在ばかりの話ではあるのだけど、それでも「火葬されれば」という公人の願いにはつながらないはず。そんな中での真相は……。ちょっとそれは無理がないか? という気はするのだけど、利己的な面々の結末としてはわかるような気がする。
「いつ別れるんですか?」 ある朝、夫の婚約者だと名乗る女が目の前に現れるところから始まる4編目『監督不行き届け』。キャリアウーマンとしてバリバリ働く満智の一家の前に現れた闖入者。夫は、その女と関係を持ってしまったことを認めるが、離婚をするとか、そういうことは言っていないという。しかし、離婚するのは当然だと思っている女はずっと離婚を迫ってくる。そんな中、夫が失踪してしまい……
ただただ、真面目に働き、子育てをしてきた満智の前に現れるエキセントリックな女。煮え切らない夫。そんな中、夫の兄弟は、満智が真面目過ぎるのが苦しめたんじゃないか? とすら言い出す。何も非がないのに責められてしまう苦しさ。女の身勝手な言動にも。そして、夫の失踪の真相は……。オチも含めて、満智には何も非がないからこその苦しさ。そして、その結末の苦さが何よりも印象に残る。
冒頭に「どんでん返し」をテーマにした、と書いたのだけど、個人的には凝縮されたイヤミスという印象の方が強いかもしれない。それぞれ、負の感情が溢れている作品ばかり、とでもいうか。その中でも、4編目のエピソードは苦しかったので、一番、印象に残った。

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Tag:小説感想水生大海

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