fc2ブログ

絶体絶命ラジオスター

著者:志駕晃

Amazon
BOOK☆WALKER

AM局の局アナにして、人気パーソナリティの垣島武史は、酔いつぶれて記憶を失った翌朝、奇妙な現象を目の当たりにする。紛失してしまった自分のスマホの位置情報がなぜか複数。FXで儲けたはずの金がなぜか引き出され、さらに部屋にも何か違和感が……。そんな中、自分そっくりな男が現れ、しかも、そいつに命を狙われているようで……
著者は元々、ラジオ番組のディレクターとか、そういう仕事をしていた、ということは知っていたので、そちらをメインにした作品かな? と思いきや、かなりガッツリとしたタイムリープもののSF作品だった。
物語は、冒頭に書いた通りの形で始まる。ラジオ局のアナウンサーながら、ラジオパーソナリティとして活躍をしている垣島。酒を飲んでは、意識を飛ばし、なんていうだらしのないところもあり、結婚を考えている恋人との関係は足踏み。ただ、そうはいっても、仕事自体は順調と言ってよい状態。そんな中に現れたわずかな違和感。スマホが消えていたり、家に誰かが入ってような感じがしたり……。でも、酔っぱらった自分が、と考えればつじつまがあわない、というほどでもない。しかし、どんどん増えていく違和感。どうやら、自分そっくりな人間が自分の周囲にいるらしい。ついには、災害もあってラジオ局に行けないとき、自分の代わりにそいつがラジオパーソナリティを務めて……
自分そっくり、というか、文字どおり、自分そのものの存在がいる、という不気味さ。最初は、のほほんといった感じの物語が、偽物に浸食されていく。さらに、その偽物に命を狙われて……という流れはホラー色の強い物語といえると思う。ただ、それがあるきっかけで、次の展開へと移ろって……
ホラー作品という印象だった物語が、中盤のある出来事をきっかけに、完全にSF作品に。ただ、その構図はわかるものの、なぜ命を狙われているのか? とか、そういう謎も残る状態に。確かに、命を狙われる要素自体は、出てくる。恐ろしい敵も出ては来る。来るのだけど、それと垣島自身の偽物との関連性というのがよくわからない。そんな中、命を狙われていた垣島がさらに……となっていって……
物語がホラー小説のような展開から、だんだんとカラーが変わっていくように、物語のテイスト自体もだんだんと変化。「これは一体、どういうことだ?」というところの意味が解きほぐされる中で、それぞれの行動の持っていた意味、その背景にあったものがわかっていく。ある意味では辻褄合わせではあるのだけど、それが心地よい。
まぁ、終盤にはラジオ番組での様子なんかもあり、しかも、そこで特別な企画を、という形になる。なるのだけど、もっと普段の番組の様子とかがあれば、より楽しめたんじゃないかと思うところはある(垣島自身が普段の番組を「ふざけた番組」とか、そういう風に言う場面はあるのだけど、具体的にどうふざけているのかよくわからない) ここがもっとはっきりしていれば、終盤の番組内のメッセージ、リスナーとの関係性がより明確になったんじゃないかと思うだけに、勿体なさを感じた。

No.7014

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想志駕晃

COMMENT 0