著者:谺健二
昭和20年8月、太平洋戦争の終結。焼け野原となった神戸は、そこから少しずつ着実に復興した。そんな神戸で、狭いながらもこだわった蔵書を集めた書店を営む多田。親から継いだ食堂を営む倉田ら、復興を目の当たりにした者たち。探偵社を営む有希、占い師の圭子。虐待を受ける同級生の少女に思いを寄せ、虐待する者の殺害を企む者。それぞれが、変わらぬ明日を信じていた。そのときまで…
本書を読み、その解説、内容紹介で「著者自身の体験談」という言葉を目にしたとき「ああ、やっぱり」というのを感じた。
1995年1月17日の早朝に起こった阪神大震災。一瞬にして崩れる町、その中での混乱と、その状況が引き起こす、人々の心への傷。これらの生々しい描写などは、その場で体験した著者だからこそ描けたもののように思うのである。そして、そんな混乱の中で起こる連続殺人…。
「何千人という人が死んでいる中、2人や3人が死んだからと、それを調べる必要があるのか?」「そういう状況だからこそ、命の重さを、事件を解決することを代償行為にしたい」という葛藤、叫びなども実に生々しい。
ただ、正直なところ、物語としては両者がちょっと乖離している印象。事件の謎などは、震災の混乱という状況だからこそであるし、また、物理的に、論理的に示されている。が、その事件そのものの印象が、大震災の描写というものの絶大な印象に負けてしまっているように思えたのが残念。
震災体験者として、伝えたかったのであろことはよく理解できた。が、それがミステリという形である必要があったのか、はちょっと疑問である。
通算1326冊目

![]() | 未明の悪夢 (光文社文庫) (2003/06/13) 谺 健二 商品詳細を見る |
昭和20年8月、太平洋戦争の終結。焼け野原となった神戸は、そこから少しずつ着実に復興した。そんな神戸で、狭いながらもこだわった蔵書を集めた書店を営む多田。親から継いだ食堂を営む倉田ら、復興を目の当たりにした者たち。探偵社を営む有希、占い師の圭子。虐待を受ける同級生の少女に思いを寄せ、虐待する者の殺害を企む者。それぞれが、変わらぬ明日を信じていた。そのときまで…
本書を読み、その解説、内容紹介で「著者自身の体験談」という言葉を目にしたとき「ああ、やっぱり」というのを感じた。
1995年1月17日の早朝に起こった阪神大震災。一瞬にして崩れる町、その中での混乱と、その状況が引き起こす、人々の心への傷。これらの生々しい描写などは、その場で体験した著者だからこそ描けたもののように思うのである。そして、そんな混乱の中で起こる連続殺人…。
「何千人という人が死んでいる中、2人や3人が死んだからと、それを調べる必要があるのか?」「そういう状況だからこそ、命の重さを、事件を解決することを代償行為にしたい」という葛藤、叫びなども実に生々しい。
ただ、正直なところ、物語としては両者がちょっと乖離している印象。事件の謎などは、震災の混乱という状況だからこそであるし、また、物理的に、論理的に示されている。が、その事件そのものの印象が、大震災の描写というものの絶大な印象に負けてしまっているように思えたのが残念。
震災体験者として、伝えたかったのであろことはよく理解できた。が、それがミステリという形である必要があったのか、はちょっと疑問である。
通算1326冊目

スポンサーサイト