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(書評)メメントモリ

著者:福田栄一

メメントモリ (Edge)メメントモリ (Edge)
(2007/02)
福田 栄一

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「なんで、こんな店で働いているんだろう」 働いていた渋谷のバーがつぶれ、半ばだまされるような形でスナック・メメントモリで働くことになった山県。ママの絢子は、気まぐれで、自分のカクテルを味わってくれる客もいない。そして、次々とトラブルまで…
腕はあるけど、恵まれた状態とは言い難い状況にあるバーテンダーの山県。場末のスナックで働く彼の元へと飛び込んでくるトラブル。元従業員の女の子は、怪しげな芸能プロとつながってしまい、店には悪徳刑事が入り浸る。過去に、ちょっとした関係のある女優・翔子がやってきて、さらには、家出娘の亜須美も転がり込んでくる。そんな状況の中、嫌だ嫌だと言いながらも対応し、少しずつ前向きに…と…。
何ていうか、力はあるけど、ちょっとふてくされている主人公。そして、次々と舞い込むトラブル、という意味では、これまでに読んだ福田氏の作品と共通しているところは多い。ただ、そのトラブルが芋づる式にふくらみ、どんどん追い込まれていく様を描くのが主題ではなく、本作は、そんな状況の中での主人公・山県の成長を描いた作品、というのが特徴になるかと思う。(第三者からすれば)それほど大きな事件とは言えないのだが、何だかんだ言いながらも、店のために、授業員仲間のために働き、そして成長していく山県の姿が何とも暖かい。
いくつかのところで、「あれ、これで終わり?」と思うかなりあっさりとした終わり方のところはあるのだけど、福田氏の持ち味であるちょっとふてくされた青年の成長物語という部分を存分に楽しむことができた。

通算1335冊目

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