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2008/08/14 (Thu) 17:31
(書評)メルカトルと美袋のための殺人

著者:麻耶雄嵩

メルカトルと美袋のための殺人 (講談社文庫)メルカトルと美袋のための殺人 (講談社文庫)
(2000/08)
麻耶 雄嵩

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空前絶後の推理能力を持ち、自らを「長編に向かない探偵」と言い切る銘探偵・メルカトル鮎と、その友人の小説家・美袋三条。二人の前に次々と起こる事件を収録した連作短編集。
麻耶氏の作品はデビュー作である『翼ある闇』から、順番通りに読んできているわけだが、デビュー作以来の「銘探偵」を主役にした作品。
とにかく、収録されている作品を読むと、1編目の『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』から、「麻耶氏の作品って、こうだよな」というのを感じる。美袋の部屋の隣で起こった拳銃による事件。自殺でないとすると、犯人は美袋? しかし、美袋の記憶と、周囲の証言の食い違い…というものなのだが、その解釈がいきなりぶっ飛んだもの。さらには、2編目、『化粧をした男の冒険』のオチのすさまじさ…と、冒頭の2編で、麻耶ワールドにこれでもか、と引きずり込まれた。
その後は比較的、落ち着いたミステリになるのだが、読んでいて、主人公である美袋と、探偵・メルカトル鮎の微妙な人間関係を感じずにはいられない。傲岸不遜な探偵役と、そこに付き合わされるワトソン役、ではあるものの、はっきり言って友人同士というには歪であり、美袋の言葉として語られる愚痴などに複雑なものを感じる。『翼ある闇』で、すでにメルカトルの最期を知っている状況からしても、その伏線とでも言うべきものを感じずにはいられなかった。
その意味で言えば、最後を飾る『シベリア急行西へ』は、非常に論理的な解決と、その意外なほどに「何もない」探偵っぷりに驚かされた。「普通の」ミステリであれば、感じないであろうことを思う、というのも作者の世界の、そのパワーを思い知らされるわけであるが。

通算1351冊目

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