fc2ブログ

(書評)ネットいじめ ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」

著者:荻上チキ

ネットいじめ (PHP新書 537)ネットいじめ (PHP新書 537)
(2008/07/16)
荻上 チキ

商品詳細を見る


ネットはいじめの温床。学校裏サイトは、匿名ゆえに誹謗中傷があふれている。そして、「子供を守れ」の言葉のもと、その規制が叫ばれる。しかし、本当に、いじめの温床なのか? 規制することで守られるのか?
最近、こういうテーマの書籍を立て続けに読んでいるのだが、つい先日読んだ『学校裏サイト』(下田博次著)辺りとかなり印象が異なる。
本書ではまず、「学校裏サイト」を巡る言説と、そこに多分に含まれる誤解・誇張を検証。続いて、実際の状況を利用者の声、さらに各種調査から検証する。そして、ネットいじめの構造を検証し、まとめる、という構成。
読んでいて感じるのは、非常に丁寧に論考されている、ということ。先ほども書いたが、下田氏の著書では、かなり誇張などが多く「恐怖を煽る」表現がされており、また、ネットの存在のない時代との比較がないなどがなく、かなり疑問が残った。それらに対する批判なども実に納得のできるところである。
著者が訴える最大のメッセージは「ネットの人間関係は、現実の人間関係の延長線上にある」というもの。特に、学校勝手サイト(本書では、裏サイトではなく、勝手サイトと表記する)のようなものでは、その傾向が強い。また、その中でも、「キャラづけ」が重要な位置を占めている。そして、そのようなものを考察しないで、ただ、規制することで解決という現状の流れが極めて危ういことは言うとおりだろう。非常に納得のできる内容であった。
著者が認めるとおり、本書の中で示される各種調査は、サンプリングなどに偏りがあり、それをそのまま信用するのは難しいだろう(ただ、どちらかと言えば、ヘビーユーザーが多いため、むしろ、数値としては下がる可能性もある) また、キャラづけの重要性という意味では、説明が不可欠なのだが、4章の説明の部分はちょっと長く、本題から外れているように感じたところはあった。とは言え、それらは別に減点材料とは思えないが。
学校裏サイト、ネットいじめ、なんていうものを考察する際に、良いテキストになるのではないかと思う。

通算1364冊目

にほんブログ村 本ブログへ


スポンサーサイト



COMMENT 0